こんなにも愛しているのに〜すれ違う夫婦〜
樹からLINEが来た。
『斉木から駅で待ち伏せをされた。
話したいというから10分だけ話して、すぐに帰る。待っていてくれ。』
誤解をされたくないからという樹の必死が伝わって来た。
リビングのソファに腰をかけて、外を見る。
冬の夕暮れは早い。
樹と同じ空を見なくなったのはいつからだろうか。
一緒にいても違うところを見ていたような気がする。
それが顕著になって来たのは二人目の子供が、不幸なことになった時からのような
気がする。
いやそれ以前に二人目が欲しいとなった時の私たちの温度差と
あの香水の人とのことからだと思う。
樹は優しく私を気遣うふりをしながら、
少しも痒いところに手が届かないような気遣いしか
できなかった。
それはもう長い付き合いで、仕方がないことと樹の気持ちに
何の裏もないということも
わかっていたが、やはり少しでも私の心に触れて欲しかった。
同じ部屋に寝ても、遠くにいる夫。
夫婦の営みもここ数年途絶えている。
主に私が応じられないのと
樹が私に強く求められないことがセックスレスの夫婦になっている。
樹からの誘いは嫌なのに、
ぎゅっと抱きしめて欲しい時もあれば、キスをして欲しい時
もある。
勝手な話だ。
「ただいま。」
玄関が開く音にも気づかずに自分の思いに堕ちこんでいた。
樹が疲れ切った顔で帰って来た。
「彼女との話はもう終わったの?」
「あぁ。」
「コーヒーを淹れようか。」
「あぁ、お願いする。
着替えて来るよ。」
私の答えは出ている。
ましろを守るために、樹と離婚する。
もう
見ないふりはやめた。
見ないふりをしても、どこかでそのつけは回ってくる。
自分の答えを出していたので、疲れ果てた樹の顔を見ても冷静でいられた。
着替えてきた樹はコーヒーを受け取ると、
今日彼女と会ってどういう会話をしたか、私に話してくれたが、
録音を聞かせてくれたわけでもないので、それが全て真実かどうか私にはわからない。
「斉木にもそういう誤解を与えて申し訳なかったと思っている。
誘われたが、俺は断っているし、初めからそういうつもりで
斉木と食事に行っていたわけでもない。
ただ、ましろにああいう姿を見られたことが、いい気になっていた俺に鉄槌が降りたと
後悔してもしたりない。どうすればいいか、ましろに対してなんと言えば、、、」
「あなたの優しさは、独りよがりでそうやって人を傷つけているのね。
彼女をその気にさせたのも、元はと言えばあなたが悪い。
けど、彼女もそういうあなたの隙をついて、
自分の思いを果たそうとしたところも考えがないと思う。」
「確かにそうだ。
斉木に対して、深い関係になろうだなんて露ほども思っていなかった。
ただ、彼女をこのままにできないと、一人前にしようと傲慢にも思って関わってしまった。」
「あなたが気づいていないだけで、彼女に惹かれていたのよ。だからそばに置いて、
可愛がって、二人で出かけたりできたんじゃない。
あなたは軽い気持ちで女の人と二人っきりで過ごすような人じゃないでしょ。」
そう
きっと樹はその子のことが好きだったと思う。
「。。。。。
罪滅ぼしかもしれない。。。」
「罪滅ぼし?」
「今の会社に移ってすぐ、部署にちょうど新卒の女の子が配属された。
立ち上げたばかりの部署で、俺も試行錯誤、配属されたスタッフも試行錯誤。
前の会社から連れて来たのは三谷たち数人だったから、本当に他を省みる余裕なんて
なくって、軌道に乗せるだけで精一杯なのに、上は新しいプロジェクトを引っ張ってくるし
みんな殺気だって、苛立っていたんだよ。」
『斉木から駅で待ち伏せをされた。
話したいというから10分だけ話して、すぐに帰る。待っていてくれ。』
誤解をされたくないからという樹の必死が伝わって来た。
リビングのソファに腰をかけて、外を見る。
冬の夕暮れは早い。
樹と同じ空を見なくなったのはいつからだろうか。
一緒にいても違うところを見ていたような気がする。
それが顕著になって来たのは二人目の子供が、不幸なことになった時からのような
気がする。
いやそれ以前に二人目が欲しいとなった時の私たちの温度差と
あの香水の人とのことからだと思う。
樹は優しく私を気遣うふりをしながら、
少しも痒いところに手が届かないような気遣いしか
できなかった。
それはもう長い付き合いで、仕方がないことと樹の気持ちに
何の裏もないということも
わかっていたが、やはり少しでも私の心に触れて欲しかった。
同じ部屋に寝ても、遠くにいる夫。
夫婦の営みもここ数年途絶えている。
主に私が応じられないのと
樹が私に強く求められないことがセックスレスの夫婦になっている。
樹からの誘いは嫌なのに、
ぎゅっと抱きしめて欲しい時もあれば、キスをして欲しい時
もある。
勝手な話だ。
「ただいま。」
玄関が開く音にも気づかずに自分の思いに堕ちこんでいた。
樹が疲れ切った顔で帰って来た。
「彼女との話はもう終わったの?」
「あぁ。」
「コーヒーを淹れようか。」
「あぁ、お願いする。
着替えて来るよ。」
私の答えは出ている。
ましろを守るために、樹と離婚する。
もう
見ないふりはやめた。
見ないふりをしても、どこかでそのつけは回ってくる。
自分の答えを出していたので、疲れ果てた樹の顔を見ても冷静でいられた。
着替えてきた樹はコーヒーを受け取ると、
今日彼女と会ってどういう会話をしたか、私に話してくれたが、
録音を聞かせてくれたわけでもないので、それが全て真実かどうか私にはわからない。
「斉木にもそういう誤解を与えて申し訳なかったと思っている。
誘われたが、俺は断っているし、初めからそういうつもりで
斉木と食事に行っていたわけでもない。
ただ、ましろにああいう姿を見られたことが、いい気になっていた俺に鉄槌が降りたと
後悔してもしたりない。どうすればいいか、ましろに対してなんと言えば、、、」
「あなたの優しさは、独りよがりでそうやって人を傷つけているのね。
彼女をその気にさせたのも、元はと言えばあなたが悪い。
けど、彼女もそういうあなたの隙をついて、
自分の思いを果たそうとしたところも考えがないと思う。」
「確かにそうだ。
斉木に対して、深い関係になろうだなんて露ほども思っていなかった。
ただ、彼女をこのままにできないと、一人前にしようと傲慢にも思って関わってしまった。」
「あなたが気づいていないだけで、彼女に惹かれていたのよ。だからそばに置いて、
可愛がって、二人で出かけたりできたんじゃない。
あなたは軽い気持ちで女の人と二人っきりで過ごすような人じゃないでしょ。」
そう
きっと樹はその子のことが好きだったと思う。
「。。。。。
罪滅ぼしかもしれない。。。」
「罪滅ぼし?」
「今の会社に移ってすぐ、部署にちょうど新卒の女の子が配属された。
立ち上げたばかりの部署で、俺も試行錯誤、配属されたスタッフも試行錯誤。
前の会社から連れて来たのは三谷たち数人だったから、本当に他を省みる余裕なんて
なくって、軌道に乗せるだけで精一杯なのに、上は新しいプロジェクトを引っ張ってくるし
みんな殺気だって、苛立っていたんだよ。」