こんなにも愛しているのに〜すれ違う夫婦〜
そうあの時は毎日が必死だった。
俺も三谷たちも、何日も家に帰れない日が続いて、
茉里は二人目を妊娠中で、無理をさせられないと思い実家に頼る日が続いていた。

「そんな中、新卒のスタッフに誰も構ってやれず、それどころかいきなり仕事を
回して、かなりきつい目に合わせていたんだ。
君も知っている加藤が同期で、かなりの努力家でできるやつだったから、同じように
思ってしまったんだ。
本人も泣き言を言わず、すみません、すみませんって謝るばかりで、、、
でも、加藤に倣って頑張っていたんだけど、1年もしないで、彼女を壊してしまった。」

俺には重くて苦しい出来事だった。

「もっとフォローできたんじゃないかって、俺たちは思ったよ。いや俺が、もっと
気を配って彼女をフォローしたら心を壊すことなく、どうにかしてあげれたのではって
思った。
そんな彼女と斉木が重なって見えたんだ。。。」

「そんなこと一言も、私には言わなかったわね。」

「俺が自分で選んだ職場だったしな、茉里は妊娠中で大変な時期だったし、、、」

「樹はいつもそう。
あなたは、私を何だと思っているの。何一つ相談もしてくれず、何一つ自分のことを
言ってくれず、こうやって一緒に暮らしていても、あなたは別の世界の人よ。
何を考えているのか、何を思っているのか、私に何を望んでいるのか。。。
わからない。」

「茉里、、、」

「はっきり言って、樹と離婚しても私の生活は何も変わらない。
ただ、あなたと他人になってあなたの世話をしなくて済むだけ。
今のこの状況は
家庭内離婚って言ってもいいんじゃないかしら。
あなたは家族にも影響がある話でも、相談もしてくれないし、人の話も聞いてくれない。
何を考えているかわからないけど、カードで堂々とデートに使うレストランのチェックを
切る。私が見るってわかっているのにね。
デートのある日は、何となく浮足だっったところが見られた。
やっぱり、彼女にときめいていたのよね。
彼女との時間があって、癒されたって言ってたものね。」

家族には強い自分を見せたかった。
いろいろと悩む姿などを茉里に見せたくなかったのもある。
弱音を吐く茉里を見たことがない手前、自分も弱音が吐けなかった。
それに
いかなる時でもどういう状況でも茉里は自分を信じて、
ついて来てくれると信じていたから。

「彼女にももちろん俺自身のことなんか、何も言わない。
会社での俺しか知らないから
気軽に話ができたんだと思う。
それに自分の中で、デートなんていう認識も一切なかった。
ただ、予約した店を喜んでくれると
いいな、ぐらいは思った。」

「あなたが彼女と一線を超えていようがいまいが、
あなたがして来たことは妻の私に対する
裏切り行為だと思う。
相手が喜ぶようにレストランを予約して、一緒に食事をして、
何を話していたかは知らないけど
二人だけの時間を過ごしたのよね。
相手も、私のことが好きだからここまでしてくれている、
って思うわよ。
たまたま昨日ましろに見られてこういうことになったけど、
もし見られていなかったら
あなたも彼女に絆されて一線をこえる時期だったんじゃないの。」

「そういうことは絶対と言っていいほど、零に等しい。」

「でも
あなたがして来たことは、私の気持ちを踏み躙るものよ。
関係がなくっても、辛い時に
彼女に縋ったってことは。。。
それにね。。。」

茉里は大きく息をつくと
俺が愕然とすることを言った。

「あなた
これが初めてじゃないでしょう?」
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