こんなにも愛しているのに〜すれ違う夫婦〜
娘を追いかけて
同じ電車に乗ったが
俺を全否定する眼差しに
同じ車両に乗ることはできなかった。
これは
浮気なのだろうか、
不倫なのだろうか。
ましろにあの場所で見つからなければ
俺はどうしていたのだろうか。
何もしていなかった。
当然
何もしていなかった。
ただ
後ろめたく
やましい気持ちは抱いていた。
最寄りの駅に降り立って
ましろの背中を見ながら改札を抜けた。
あの背中の強張りに
もう
手が届かないところに
娘がいるのが
わかった。
早足で歩いていく娘の姿は
あっという間に見えなくなった。
俺は
少しの間
空を見上げて冷たい月を見つめた。
何がしたかったんだ俺は。
家に帰り
ドアを開けた途端
ましろの泣き喚く声が聞こえた。
重苦しい気持ちで靴をのろのろと脱いで
玄関に上がり
リビングのドアを開ける。
「なんで帰ってくるのよ!
よく帰ってこれたわね!」
「ましろっ!」
髪を振り乱して
俺に突進してくるましろを
妻の茉里が止める。
「若い女とホテルにいたのに。
あの女から好きだなんて言われていて、
そんな女と不倫していた汚い人に、この家に入ってほしくない!」
「ましろ、わかったから。
これからお母さん、お父さんと話をするから、部屋に行っていて。
お願い。」
茉里の落ち着いた声が、娘を押し留める。
「絶対に離婚してよね。離婚しなかったら、私がこの家を出ていく。
同じ家で暮らしたくもない!」
俺を睨んで、ましろが荒々しく部屋を出て行った。
茉里が大きくため息をつき
俺を正面から見据えた。
「座ったら。」
そういうと台所に行き
コップに水を汲んで持って来た。
目の前に
それぞれのコップが置かれた。
茉里はその水を一息で飲む。
珍しい。
いつもはそういう飲み方など
一度もしたことがないのに。
同じ電車に乗ったが
俺を全否定する眼差しに
同じ車両に乗ることはできなかった。
これは
浮気なのだろうか、
不倫なのだろうか。
ましろにあの場所で見つからなければ
俺はどうしていたのだろうか。
何もしていなかった。
当然
何もしていなかった。
ただ
後ろめたく
やましい気持ちは抱いていた。
最寄りの駅に降り立って
ましろの背中を見ながら改札を抜けた。
あの背中の強張りに
もう
手が届かないところに
娘がいるのが
わかった。
早足で歩いていく娘の姿は
あっという間に見えなくなった。
俺は
少しの間
空を見上げて冷たい月を見つめた。
何がしたかったんだ俺は。
家に帰り
ドアを開けた途端
ましろの泣き喚く声が聞こえた。
重苦しい気持ちで靴をのろのろと脱いで
玄関に上がり
リビングのドアを開ける。
「なんで帰ってくるのよ!
よく帰ってこれたわね!」
「ましろっ!」
髪を振り乱して
俺に突進してくるましろを
妻の茉里が止める。
「若い女とホテルにいたのに。
あの女から好きだなんて言われていて、
そんな女と不倫していた汚い人に、この家に入ってほしくない!」
「ましろ、わかったから。
これからお母さん、お父さんと話をするから、部屋に行っていて。
お願い。」
茉里の落ち着いた声が、娘を押し留める。
「絶対に離婚してよね。離婚しなかったら、私がこの家を出ていく。
同じ家で暮らしたくもない!」
俺を睨んで、ましろが荒々しく部屋を出て行った。
茉里が大きくため息をつき
俺を正面から見据えた。
「座ったら。」
そういうと台所に行き
コップに水を汲んで持って来た。
目の前に
それぞれのコップが置かれた。
茉里はその水を一息で飲む。
珍しい。
いつもはそういう飲み方など
一度もしたことがないのに。