こんなにも愛しているのに〜すれ違う夫婦〜
「私が怖い、、、?
あれから10年近く経って、こんなことを言い出して。
あの時
怖くってあなたに言えなかったのよ。本当に、あなたを愛していたのよ。
あなたが他所に行くのが怖くって、ましろや廉を人質にして、あなたを
縛り付けていたのよ。
でもね、もう、いいの。これ以上あなたといると、私が壊れるかあなたが
本当に私に愛想がつくか、、、そして今は、ましろが壊れそうで。
あの時私が、あなたときちんと向き合わなきあったせいで、廉を失い
今、ましろまで壊そうとしている。」

茉里が両手に顔を埋めて、静かに泣き出した。

「違う。
悪いのは俺だ。全て俺のせいだ。廉を失った原因も俺にある。
茉里を愛しているあまり、弱い自分を見せたくなかった。友達のことを
あれこれ言うなと、茉里に行った手前、林田のことも言えなかった。
俺のどうでもいいプライドのせいで、茉里を苦しめて来たんだ。
それなのに、苦しんでいる茉里を見ていると自分のしでかしたことに
嫌気がさして、他に逃げていたんだ。
俺が、大事にしなくてはいけない家族なのに、俺自身が壊していたんだ。」

茉里の小さな泣き声が切ない。

「深野さんだったら、お義母さんのお気に入りのお嫁さんになったかもね。
明るくて、気が利いてそうで頭も良くって、、、
樹が惹かれるのがわかる人だわ。」

「彼女には婚約者がいた。
しかも結婚間近で、最後の方は家を継ぐとかで遠距離になっていたが、
こっちにいた時は一緒に暮らしていた。」

「。。。。。」

「彼女の話は今更か。。。」

「いいえ、続けて。。。」

「深野は林田のサークル仲間で、立ち上げからしばらくして林田が引っ張ってきた。
その時から、年下の男性と結婚前提に一緒に暮らしていた。
だから、本当に女性というより仕事仲間でしかなかったんだ。
でも、林田があんな風で俺たちに仕事の大半を抱えさせるようになって、
深野とともに仕事に携わることも多く、段々と強い連帯意識が出てきた。
林田のこともよく知っているから、遠慮なく愚痴ることもできたし、仕事の話も
できた。」

「おまけに、仕事がキツくなると、ストレスであなたがアレルギー蕁麻疹を
起こすことも知っている。
ひどい時には点滴を受けなくてはいけなくなって、彼女がずっと付き添っていたんでしょ?
奥さんにも間違えられたって。。。」

「えっ?」

「あなたと一緒に病院で会ったあと、9ヶ月検診の日にも偶然会ったの。
会釈だけで通り過ぎようとしたら、彼女から声をかけられて少しお話ししませんせんか?
って。何かを理由に強引に誘われたの。」

「。。。。。」

「これからまた、大変になりますねって。林田くんとの縁が続く限り、だから
奥さんも西澤くんの体調に気を配ってくださいねって。
奥さんの体調が悪いとかで、西澤くん家で弱音を吐けなかったのか、
ストレスからのアレルギー蕁麻疹で救急に行った時も、体調を崩して病院に
運ばれた時も、奥さんには心配をかけたくないとかで
私が付き添ったんです。って。
でも私も結婚して会社を離れたから、西澤くんの体調が心配で、、、、
笑っちゃうわよね。
それって、私が樹のことを一番知っているんですよって、マンウントをとって
いるようなものでしょ。
私は、なんのよって、、、」

深野が茉里に嫌がらせをしたのか。
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