こんなにも愛しているのに〜すれ違う夫婦〜
「意地悪をね、したの。」
あまりの悔しさと
そういうことを言ってくる彼女に思いっきり嫌悪感を抱いた私は
知らない樹のことできっと、面白いくらいに困惑していたのが
彼女には丸わかりだったと思う。
「深野さん、つわりは?」
「え?」
急に話題を変えた私に戸惑いの表情を見せた彼女。
「お母様の介護と妊娠、つわりがあったら大変だろうなぁって思って。」
「親孝行な子で、つわりもなくって妊娠しているのを忘れるくらいです。」
「そう、よかったですね。
私も上の子の時は、ほとんどつわりで苦しむことはなかったのだけど、
この子時は、つわりが酷くって。特に匂い。
自分のシャンプーの匂いでも、戻してしまったりして、とても敏感になっていたの。
でも、一番はね。
樹についてくる香水の移り香。。。もう、それはそれは便器とお友達になるのって
いうくらいに大変で、、、今も、少し残っているの。
さっきから少し吐き気があるのよね。
樹について来ていた移り香。
あなたと同じ香。
ごめんなさい。これからトイレで吐いてくるわ。少しはスッキリとすると思うから。
深野さんも匂いに敏感になる時が来るかもしれない。
気をつけてね。
お腹に赤ちゃんがいるんですものね。
元気な子を産みたいですね。なんの憂いもなく。」
その一言で顔色が変わった彼女を置いて
本当に私はトイレで吐いた。
私は知っているのよ。
あなたと樹のこと。
あなたは結婚したんじゃないの。
ご主人との子を妊娠しているんでしょ。
何を樹に執着しているの。
私を攻撃してどうしたいの。。。。
吐きながら、
涙が止まらなかった。
彼女も樹も憎くて憎くて仕方がなかった。
きっと
身体中をどず黒い嫉妬が渦巻き
二人を奈落の底に落としたかった。
「そんな醜い私に嫌気がさしたのか、お腹の廉の心臓が止まったのね。
この世に生まれ落ちても、僕は幸せじゃない。
こんなお母さんのところに生まれたくない、、、」
「止めてくれ。。。
茉里のせいじゃない。俺のせいだ。
廉を妊娠した時も、その後も俺のせいで茉里の気持ちを踏み躙っていたんだ。
優しくしているつもりが、俺の傲慢さで茉里と廉を苦しめていたんだ。」
樹が目を真っ赤にして
声を振り絞っていた。
「あの時、廉を無くしたことで立ち直れない私は心療内科に通っていたの。
あなたは私のことを気にはかけてくれていたけど、忙しく私になんか
構っていられなかったでしょ。
見かねた母が、帰っていらっしゃいって言ってくれて、、、
そのまま、あなたと別れようと思って。
どんなに母にあなたのことを打ち明けようかと、口まででかかったのに
一時期とはいえ、学校を変わって私と一緒にいたましろが
’お父さんが迎えに来るんでしょ?
お父さんが来たらお母さんも帰れる?’
って尋ねるのよ。」
その時のましろの様子を思い描いてか、樹の目からも止めなく涙が
流れてきた。
「結局母にも何もいえず、自分をなんとか立て直して戻ってきたわ。」
「家に帰ったら、俺に飛びついてきたましろを受け止めて
この幸せを壊すわけにはいかないと、思ったんだ。」
あの日から
私は家族を立て直すって決心して、勤めて普通に暮らすようにしたけど
樹と身体を重ねることには、抵抗があった。
樹の求めに応じようとしても、心も身体も開くことはなかった。
それから
段々と樹との夫婦生活は疎遠になって行った。
そうやって普通に暮らしていても、
深野さんとのフラッシュバックは起きるし、
特に廉の命日前後は一番酷く
暗く暗く落ち込む日ばかりだった。
思い出す。
あの病院での彼女とのやりとりを、
樹から香ってきたあの香水の香りが
部屋中に充満しているようで。
私は意味もなく一日中窓を開けて
お風呂に入って全身を隈なく洗って
樹のシーツからカバーから
衣類まで、何回も病的に洗濯をしていた。
それでも
親子3人で廉のことを悼み
命日に手を合わせることができるのは
矛盾をしているようだが
私を落ち着かせていた。
あまりの悔しさと
そういうことを言ってくる彼女に思いっきり嫌悪感を抱いた私は
知らない樹のことできっと、面白いくらいに困惑していたのが
彼女には丸わかりだったと思う。
「深野さん、つわりは?」
「え?」
急に話題を変えた私に戸惑いの表情を見せた彼女。
「お母様の介護と妊娠、つわりがあったら大変だろうなぁって思って。」
「親孝行な子で、つわりもなくって妊娠しているのを忘れるくらいです。」
「そう、よかったですね。
私も上の子の時は、ほとんどつわりで苦しむことはなかったのだけど、
この子時は、つわりが酷くって。特に匂い。
自分のシャンプーの匂いでも、戻してしまったりして、とても敏感になっていたの。
でも、一番はね。
樹についてくる香水の移り香。。。もう、それはそれは便器とお友達になるのって
いうくらいに大変で、、、今も、少し残っているの。
さっきから少し吐き気があるのよね。
樹について来ていた移り香。
あなたと同じ香。
ごめんなさい。これからトイレで吐いてくるわ。少しはスッキリとすると思うから。
深野さんも匂いに敏感になる時が来るかもしれない。
気をつけてね。
お腹に赤ちゃんがいるんですものね。
元気な子を産みたいですね。なんの憂いもなく。」
その一言で顔色が変わった彼女を置いて
本当に私はトイレで吐いた。
私は知っているのよ。
あなたと樹のこと。
あなたは結婚したんじゃないの。
ご主人との子を妊娠しているんでしょ。
何を樹に執着しているの。
私を攻撃してどうしたいの。。。。
吐きながら、
涙が止まらなかった。
彼女も樹も憎くて憎くて仕方がなかった。
きっと
身体中をどず黒い嫉妬が渦巻き
二人を奈落の底に落としたかった。
「そんな醜い私に嫌気がさしたのか、お腹の廉の心臓が止まったのね。
この世に生まれ落ちても、僕は幸せじゃない。
こんなお母さんのところに生まれたくない、、、」
「止めてくれ。。。
茉里のせいじゃない。俺のせいだ。
廉を妊娠した時も、その後も俺のせいで茉里の気持ちを踏み躙っていたんだ。
優しくしているつもりが、俺の傲慢さで茉里と廉を苦しめていたんだ。」
樹が目を真っ赤にして
声を振り絞っていた。
「あの時、廉を無くしたことで立ち直れない私は心療内科に通っていたの。
あなたは私のことを気にはかけてくれていたけど、忙しく私になんか
構っていられなかったでしょ。
見かねた母が、帰っていらっしゃいって言ってくれて、、、
そのまま、あなたと別れようと思って。
どんなに母にあなたのことを打ち明けようかと、口まででかかったのに
一時期とはいえ、学校を変わって私と一緒にいたましろが
’お父さんが迎えに来るんでしょ?
お父さんが来たらお母さんも帰れる?’
って尋ねるのよ。」
その時のましろの様子を思い描いてか、樹の目からも止めなく涙が
流れてきた。
「結局母にも何もいえず、自分をなんとか立て直して戻ってきたわ。」
「家に帰ったら、俺に飛びついてきたましろを受け止めて
この幸せを壊すわけにはいかないと、思ったんだ。」
あの日から
私は家族を立て直すって決心して、勤めて普通に暮らすようにしたけど
樹と身体を重ねることには、抵抗があった。
樹の求めに応じようとしても、心も身体も開くことはなかった。
それから
段々と樹との夫婦生活は疎遠になって行った。
そうやって普通に暮らしていても、
深野さんとのフラッシュバックは起きるし、
特に廉の命日前後は一番酷く
暗く暗く落ち込む日ばかりだった。
思い出す。
あの病院での彼女とのやりとりを、
樹から香ってきたあの香水の香りが
部屋中に充満しているようで。
私は意味もなく一日中窓を開けて
お風呂に入って全身を隈なく洗って
樹のシーツからカバーから
衣類まで、何回も病的に洗濯をしていた。
それでも
親子3人で廉のことを悼み
命日に手を合わせることができるのは
矛盾をしているようだが
私を落ち着かせていた。