こんなにも愛しているのに〜すれ違う夫婦〜
夫婦の噛み合わない会話
落ち着くために
グラスに水を注ぎ
私と樹の前にそれを置き
私はグラスの中を
一気に飲み干し
樹を見据えた。
樹は
グラスを両手で包み込むようにして
それをじっと
見つめていた。
42歳の父親が
15歳の娘に不倫現場を抑えられるなんて
どうしちゃったの
あなた。
あなたらしくないわよ。と
心の中で
私も夫を詰る。
***********
私と樹は同じ大学の
学部は違うが先輩と後輩になる。
樹が大学院に進もうかという時に
知り合った。
というか
言葉を交わすようになった。
お互いの友人同士がカップルで
その関係で知り合い
友人カップルと4人で
キャンパスでよくランチをしたり
カフェでお茶をしたりするようになったのだ。
私の中での樹は
友達の彼氏の友人というだけの存在だったが
ある日突然に
告白された。
「ずっと君のことが気になっていた。
女の子が喜ぶようなことを何一つ
言えない俺だけど
俺と付き合って欲しい。」
彼の不器用さがよくわかる
何も飾らない告白だった。
「私は付き合うことが
どういうことかわからないけど、
西澤さんをもっと知りたい。」
そう
私は樹が好きだったんだって。
二人で会うこともなければ
話したこともないのに。
でも
無口だけど樹が持つ優しさとその包容力に
私は惹かれていたのだと思う。
付き合った樹は
大人で思慮深く
決して人を傷つけるようなことは
しないし
言ったこともない。
背が高く
精悍な容貌と落ち着いた雰囲気の樹は
かなり
モテていた。
それゆえに
私なんかは樹に気にも留められていないと
思っていた。
付き合い始めても
樹に告白してくる女性もいた。
「ごめん。
俺大事な人がいるから。」
そうやって断っているのを真横で
見たときもあった。
そんな樹を友人たちが揶揄う。
「お前、告白されたら断らない男っだったのに。
驚きだよ。
自分が好きになったら一直線か。」
私が横にいるのに
デリカシーのかけらもないような言い方だ。
「ごめん。」
私の腕を取って
その場から不機嫌そうに離れる樹。
歩きながら
話してくれて。
付き合うという事がわからなくて
’付き合って’と
言われたら断らなかった。
ただ
そこから
一歩も進まない交際もあれば
続いていく交際もあった。
ただし
何人かと同時進行のような付き合い方は
しなかった。
と正直に私に話してくれた。
「つきあってと言われて付き合って来たけど
いつも最後には振られていた。
私を大事にしていない。
自分が一番。
私より友達が大事。
何を考えているかわからない。
散々なことを言われて振られるのがオチで。」
「俺なりに大事にしていたつもりだけど
勉強やバイトの優先は譲れないし、
友達も大事だ。
でも、好きな人を疎かにしているってわけではなかったんだが。
そういうのは付き合う上で、許されないことなのだろうか。」
「私は西澤さんとお付き合いをするのは初めてだから
何が嬉しくて何が嫌で、何が許されて何が許されないか、
わかりません。
だからこれからあなたを知っていこと思っています。
ただ、、、」
「ただ、、、?」
「今まで付き合って来た人たちと、私を比べられたくない。
西澤さんも私との付き合い方を、考えて行って欲しい。」
「もちろんだ。
君は俺が初めて付き合って欲しいと思った人だ。」
それから
私たちは老夫婦のように落ち着いたカップルと
揶揄われながらも
自分たちのペースで付き合いを進めていった。
樹に置き去りにされているという思いも
かまわれすぎているという思いもなく
私は彼といる時間が
自分にとっての安らぎのような時で
その安堵感の中で二人の時を
重ねて行った。
樹は本当に私のことを好きだ、大事だと
言葉にせずともちょっとしたことでわからせてくれた。
私の元彼の存在にわかりやすく
嫉妬したり
樹の元カノが彼に近寄ったり
連絡をよこしたりした時など
尋ねもしないのに
知らせてくれたりしていた。
誤解をされたくないからと。
***************************
「いつからなの?」
「えっ?」
何を聞かれているのだろうという顔で
樹が私を見る。
グラスに水を注ぎ
私と樹の前にそれを置き
私はグラスの中を
一気に飲み干し
樹を見据えた。
樹は
グラスを両手で包み込むようにして
それをじっと
見つめていた。
42歳の父親が
15歳の娘に不倫現場を抑えられるなんて
どうしちゃったの
あなた。
あなたらしくないわよ。と
心の中で
私も夫を詰る。
***********
私と樹は同じ大学の
学部は違うが先輩と後輩になる。
樹が大学院に進もうかという時に
知り合った。
というか
言葉を交わすようになった。
お互いの友人同士がカップルで
その関係で知り合い
友人カップルと4人で
キャンパスでよくランチをしたり
カフェでお茶をしたりするようになったのだ。
私の中での樹は
友達の彼氏の友人というだけの存在だったが
ある日突然に
告白された。
「ずっと君のことが気になっていた。
女の子が喜ぶようなことを何一つ
言えない俺だけど
俺と付き合って欲しい。」
彼の不器用さがよくわかる
何も飾らない告白だった。
「私は付き合うことが
どういうことかわからないけど、
西澤さんをもっと知りたい。」
そう
私は樹が好きだったんだって。
二人で会うこともなければ
話したこともないのに。
でも
無口だけど樹が持つ優しさとその包容力に
私は惹かれていたのだと思う。
付き合った樹は
大人で思慮深く
決して人を傷つけるようなことは
しないし
言ったこともない。
背が高く
精悍な容貌と落ち着いた雰囲気の樹は
かなり
モテていた。
それゆえに
私なんかは樹に気にも留められていないと
思っていた。
付き合い始めても
樹に告白してくる女性もいた。
「ごめん。
俺大事な人がいるから。」
そうやって断っているのを真横で
見たときもあった。
そんな樹を友人たちが揶揄う。
「お前、告白されたら断らない男っだったのに。
驚きだよ。
自分が好きになったら一直線か。」
私が横にいるのに
デリカシーのかけらもないような言い方だ。
「ごめん。」
私の腕を取って
その場から不機嫌そうに離れる樹。
歩きながら
話してくれて。
付き合うという事がわからなくて
’付き合って’と
言われたら断らなかった。
ただ
そこから
一歩も進まない交際もあれば
続いていく交際もあった。
ただし
何人かと同時進行のような付き合い方は
しなかった。
と正直に私に話してくれた。
「つきあってと言われて付き合って来たけど
いつも最後には振られていた。
私を大事にしていない。
自分が一番。
私より友達が大事。
何を考えているかわからない。
散々なことを言われて振られるのがオチで。」
「俺なりに大事にしていたつもりだけど
勉強やバイトの優先は譲れないし、
友達も大事だ。
でも、好きな人を疎かにしているってわけではなかったんだが。
そういうのは付き合う上で、許されないことなのだろうか。」
「私は西澤さんとお付き合いをするのは初めてだから
何が嬉しくて何が嫌で、何が許されて何が許されないか、
わかりません。
だからこれからあなたを知っていこと思っています。
ただ、、、」
「ただ、、、?」
「今まで付き合って来た人たちと、私を比べられたくない。
西澤さんも私との付き合い方を、考えて行って欲しい。」
「もちろんだ。
君は俺が初めて付き合って欲しいと思った人だ。」
それから
私たちは老夫婦のように落ち着いたカップルと
揶揄われながらも
自分たちのペースで付き合いを進めていった。
樹に置き去りにされているという思いも
かまわれすぎているという思いもなく
私は彼といる時間が
自分にとっての安らぎのような時で
その安堵感の中で二人の時を
重ねて行った。
樹は本当に私のことを好きだ、大事だと
言葉にせずともちょっとしたことでわからせてくれた。
私の元彼の存在にわかりやすく
嫉妬したり
樹の元カノが彼に近寄ったり
連絡をよこしたりした時など
尋ねもしないのに
知らせてくれたりしていた。
誤解をされたくないからと。
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「いつからなの?」
「えっ?」
何を聞かれているのだろうという顔で
樹が私を見る。