こんなにも愛しているのに〜すれ違う夫婦〜
俺の仕事が決まった。
ずっと
ハンティングをされていた外資系の会社だ。
大学の先輩がそこのアジア圏のトップにいて、気にかけてもらっていた。
しかし
勤務先がシンガポール。
悩んだが、
相談した茉里に
少し距離的にも離れた方がお互いに良いのではないかと言われ
受けることにした。
「別居だが離婚はしないから、
もし、俺に何かあったら茉里に連絡がいく。」
「いやね、縁起でもないことを言わないで。」
「いや。それが俺の望みだから。それに、もし茉里たちに何かあったら
家族である俺に連絡がある。
遠く離れていても、家族だという繋がりがあることが嬉しい。」
そうだ。
知らないところで何かあるのが嫌なんだ。
今まで
散々二人を放っておいたくせに、
俺は何てわがままなんだ。
「養育費生活費は取り決めた額だけでいいから。
今みたいに、お給与の2/3も振り込んでこないで。
自分の生活もあるでしょう。
今度は特に海外だから、無茶な金額はいらないわ。
私も働いているんだし。」
「大丈夫だ。
これぐらいしか繋がりがないんだから。好きなようにさせてくれ。
飢え死にするような無茶な振込みはしないから。
それに、
これからましろだって大学受験もあるし
お金はいくらあってもいいだろう。」
「とにかく取り決めた金額だけにして。
それ以外は返金するから。
何か必要になったら、その都度相談するから。」
茉里とは当たり前だが別居してからの方が
よく話すようになった。
ましろのことにしろ、お互いの親のことや自分たちのこと。
離れている分話さないと先に進まないことだらけだった。
一緒暮らしていも同じだったろうに。
茉里一人に何でも背負わせていた。
「無理かもしれないが、
一度くらいはシンガポールに遊びにきて欲しい。」
「どうだろう、、、、」
「贅沢な願いだな。離婚されなかっただけ、ありがたいと思わなきゃな。」
自嘲気味に言う。
「離婚猶予。。。
樹が好きな人ができたら、いつでも言って。
離婚前に、
その人とどうにかなっちゃう前に、
好きな人ができたからって、
離婚を申し出てもらえる方が、いいから。」
「離婚はしない。
茉里以外の人と恋愛なんてしない。
考えたくもないけど、茉里にもし好きな人ができたら、言ってほしい。
その時、初めて俺は離婚ということを考える。
そんな日が来ないといいけど。。。」
そう言うことを考えるだけで、
胸が苦しい。
茉里が俺以外の男と恋愛関係に陥ることが死ぬほど辛いなどと、
勝手な言い分だ。
「ましろが高校を卒業するまでの3年間。
私たちのことをゆっくりと考えましょう。
とにかく、、、」
茉里が気を取り直したかのように俺に向き直って言った。
「身体に気をつけて。
無理をしないで、楽しく仕事してシンガポールライフを満喫して。」
「あぁ、茉里も。
今までもワンオペ同様だったけど、これからも一人で頑張らせてしまうけど
ごめん。
毎日、茉里達のことを思って暮らすよ。
うるさいぐらいに連絡をすると思うけど、
生きているんだなぁって、思ってくれ。
既読スルーしても構わない。」
「そうね。」
「それと、廉の命日には帰国するから。」
「無理しないで。。どこにいても廉のことは偲べる。」
「一緒に廉のお参りをしたいけど、ましろのことを思うと
そんなわがままも言えないだろうから、一人でお参りするよ。
身体に気をつけて、何か助けて欲しいことや、聞いて欲しいことが
あったら、いつでも連絡をくれ。」
「そうね。。。」
茉里はどことなく俺の話を聞き流すようにして返事をした。
茉里に触れたい。
全力で拒否されそうだが。。。
茉里の手を取った。
ぎくりと身体が固まるのがわかったが
無視をして手を取ったまま言った。
「一度でいいから、
シンガポールに来て欲しい。
ましろとでもお母さん達とでも、
一人でもいいから、俺が働いているところを
見に来て欲しい。」
本当はついてきて欲しかったけど、
そんなことは言えない。
茉里が俺の手を振り払わないことをいいことに
両手で握りしめた。
細く
頼りないほど細い手だった。
いろいろな思いが頭の中を駆け巡り
泣き出してしまいそうになった。
そんな俺を見て
茉里は
ふわりと
やわらかく笑った。
久しぶりの茉里の笑い顔だった。
思わず
茉里を抱きしめた。
ずっと
ハンティングをされていた外資系の会社だ。
大学の先輩がそこのアジア圏のトップにいて、気にかけてもらっていた。
しかし
勤務先がシンガポール。
悩んだが、
相談した茉里に
少し距離的にも離れた方がお互いに良いのではないかと言われ
受けることにした。
「別居だが離婚はしないから、
もし、俺に何かあったら茉里に連絡がいく。」
「いやね、縁起でもないことを言わないで。」
「いや。それが俺の望みだから。それに、もし茉里たちに何かあったら
家族である俺に連絡がある。
遠く離れていても、家族だという繋がりがあることが嬉しい。」
そうだ。
知らないところで何かあるのが嫌なんだ。
今まで
散々二人を放っておいたくせに、
俺は何てわがままなんだ。
「養育費生活費は取り決めた額だけでいいから。
今みたいに、お給与の2/3も振り込んでこないで。
自分の生活もあるでしょう。
今度は特に海外だから、無茶な金額はいらないわ。
私も働いているんだし。」
「大丈夫だ。
これぐらいしか繋がりがないんだから。好きなようにさせてくれ。
飢え死にするような無茶な振込みはしないから。
それに、
これからましろだって大学受験もあるし
お金はいくらあってもいいだろう。」
「とにかく取り決めた金額だけにして。
それ以外は返金するから。
何か必要になったら、その都度相談するから。」
茉里とは当たり前だが別居してからの方が
よく話すようになった。
ましろのことにしろ、お互いの親のことや自分たちのこと。
離れている分話さないと先に進まないことだらけだった。
一緒暮らしていも同じだったろうに。
茉里一人に何でも背負わせていた。
「無理かもしれないが、
一度くらいはシンガポールに遊びにきて欲しい。」
「どうだろう、、、、」
「贅沢な願いだな。離婚されなかっただけ、ありがたいと思わなきゃな。」
自嘲気味に言う。
「離婚猶予。。。
樹が好きな人ができたら、いつでも言って。
離婚前に、
その人とどうにかなっちゃう前に、
好きな人ができたからって、
離婚を申し出てもらえる方が、いいから。」
「離婚はしない。
茉里以外の人と恋愛なんてしない。
考えたくもないけど、茉里にもし好きな人ができたら、言ってほしい。
その時、初めて俺は離婚ということを考える。
そんな日が来ないといいけど。。。」
そう言うことを考えるだけで、
胸が苦しい。
茉里が俺以外の男と恋愛関係に陥ることが死ぬほど辛いなどと、
勝手な言い分だ。
「ましろが高校を卒業するまでの3年間。
私たちのことをゆっくりと考えましょう。
とにかく、、、」
茉里が気を取り直したかのように俺に向き直って言った。
「身体に気をつけて。
無理をしないで、楽しく仕事してシンガポールライフを満喫して。」
「あぁ、茉里も。
今までもワンオペ同様だったけど、これからも一人で頑張らせてしまうけど
ごめん。
毎日、茉里達のことを思って暮らすよ。
うるさいぐらいに連絡をすると思うけど、
生きているんだなぁって、思ってくれ。
既読スルーしても構わない。」
「そうね。」
「それと、廉の命日には帰国するから。」
「無理しないで。。どこにいても廉のことは偲べる。」
「一緒に廉のお参りをしたいけど、ましろのことを思うと
そんなわがままも言えないだろうから、一人でお参りするよ。
身体に気をつけて、何か助けて欲しいことや、聞いて欲しいことが
あったら、いつでも連絡をくれ。」
「そうね。。。」
茉里はどことなく俺の話を聞き流すようにして返事をした。
茉里に触れたい。
全力で拒否されそうだが。。。
茉里の手を取った。
ぎくりと身体が固まるのがわかったが
無視をして手を取ったまま言った。
「一度でいいから、
シンガポールに来て欲しい。
ましろとでもお母さん達とでも、
一人でもいいから、俺が働いているところを
見に来て欲しい。」
本当はついてきて欲しかったけど、
そんなことは言えない。
茉里が俺の手を振り払わないことをいいことに
両手で握りしめた。
細く
頼りないほど細い手だった。
いろいろな思いが頭の中を駆け巡り
泣き出してしまいそうになった。
そんな俺を見て
茉里は
ふわりと
やわらかく笑った。
久しぶりの茉里の笑い顔だった。
思わず
茉里を抱きしめた。