こんなにも愛しているのに〜すれ違う夫婦〜
「いつからなの?」
「えっ?」
茉里からの問いに俺は一体何を尋ねているのだろうかと
思った。
「その女の人と。
そもそもどういう人?
会社の人?」
ましろが見た女といつから付き合っているのかと
茉里が尋ねている、というのがわかった。
答える前に別の質問を
矢継ぎ早にされる。
茉里は付き合い始めた大学生の頃から、
淡々として落ち着いている女子学生だった。
それまで付き合ってきた女の子たちのように
自分の考えを押し付けたり
気に入らないと拗ねるということもした事がなかった。
その茉里が
一気に水を飲み干すと
俺に次々と質問を浴びせる。
「樹、聞こえてる?
その女の人はどこの誰なの?」
「同じ部署の事務補佐の子。」
「いつからなの?」
「、、、、」
いつからとは、、、
「私、少しあなたらしくない行動に違和感を持っていたのよ。」
「えっ、、、」
「あなたのカード明細。
私がチェックしているでしょう。あなたの口座から
引き落としができなくなって
慌ててしまって以来。」
「あぁ、俺が頼んだ。」
俺のカードからは
交際費や出張の際の立替払い、その他俺自身の身の回りの物などに使っている。
以前
仕事が立て込んだ時に年若い課の者たちに幾度となく
食事をご馳走して
口座残金額を
オーバーしてしまった事があり、
以来茉里に頼んで、
明細書と口座残高をチェックしてもらっていた。
「半年前ぐらいからレストランからの請求があって
結構毎月、月に2、3回。
それでも 私が見ているってわかっているから
やましいことではないんだろうな、って思っていたの。
でも 度重なって、やっぱりモヤモヤして
レストランを調べたりしたら、部下を引き連れていくような
居酒屋ではなく、本当に洒落たレストランでしかも
二人分のコース料理のお値段かなぁって。。。」
「。。。。」
そうだ
斉木を連れて行ったレストランでいつものようにカードで
支払っていた。
それは
ただ食事をしているという何のやましさも抱いてなかった故の
俺の行動だ。
「ましろが私のパソコンを借りているとき、どうしても私もパソコンを
使わなくてはいけない時はあなたのを借りていたわよね。」
「あぁ。。。」
「何気なく見た履歴にレストランの予約があって
あぁ、この人は自分でレストランを予約して、誰かと行っていたんだって、、、」
「。。。。」
「結婚してから、二人であなたがレストランを予約して、食事に行ったことなんてあったかしら?
ましろが生まれて、二人でレストランに食事に行ったこともないんじゃない?
それなのに
あなたは他の女の人のためにレストランを予約して、食事に行って、カードで支払って
私にそれを見せて、何がしたいのかしらね。
自分には大事な人がいるから察してくれって言いたい」
「違う!」
茉里の言葉を遮るように声を上げた。
手の中のコップから水が飛び出て、自分の手とズボンを濡らした。
「彼女 斉木は新卒でうちに来て2年目だけど、
はっきり言って仕事があまりできる方じゃない。
一生懸命で頑張っていたが、今年に入って失敗続きで、自信を無くしていた。
課の他の女性たちからも疎んじられていて、もう辞めるっていうところまで来ていた。
でも 今辞めたら本当に辛いだけの思いしか残らないから、もう少し頑張ってみろと
励ましたり、仕事を円滑に進めるためのアドバイスをしたりしていたんだ。
少し仕事ができるようになって、ご褒美ということで食事に誘った。」
「あなたが誘ったの?」
茉里の顔が大きく歪んだ。
「違うんだ。
斉木を好きだとかそういう感情ではなく、
本当にましろのように頑張ったご褒美というくらいの
意味しかなかった。」
「そうやって情に絆されていったわけ。。。」
「あの時期、俺は悩んでいた。」
「ええ。
いつもと違うあなたに私が近頃どうしたの?
悩みでもあるの?って尋ねていた頃ね。」
「あぁ、、、その悩みをもちろん斉木に言っていたわけではない。
でも、仕事がうまく行って
ご褒美にと食事に誘って、わかりやすく喜んで、わかりやすく俺を頼りにしている
彼女を見て少し癒されていた。。。」
「私には何でもない。
自分で考えることだから、しばらく放って置いてくれてって言っていたあなたが
その人には癒されていたわけね。
私はあなたの一番だと思っていたのに、とんだお笑い草だわ。
私でもましろでもなく、あなたを支えていたのが彼女なのね。
こんなに辛くて悔しいことはない。
おまけに今日はその娘に不倫現場をみられちゃって。」
茉里の顔が痛みで歪んでいく。
違う。
俺は君にそんな顔をさせたくって言ったんじゃない。
「ましろは今中三よ。
通っていた私立の中学校を辞めてまで、受験したい高校があるって頑張っているのに。
頑張っている子はその人だけじゃない!
自分の子供を励ますどころか、ご褒美をあげるどころか
親として最低な姿を見せて。。。」
心臓が痛い。。。
「あの子があなたを許すことはできないと思う。
きっと同じ家にも住めないと思う。あなたもましろも私も辛い。
特に受験期のましろの気持ちを思うと、あの子が言うように離婚しか
ないんじゃないかと思っている。」
「えっ?」
茉里からの問いに俺は一体何を尋ねているのだろうかと
思った。
「その女の人と。
そもそもどういう人?
会社の人?」
ましろが見た女といつから付き合っているのかと
茉里が尋ねている、というのがわかった。
答える前に別の質問を
矢継ぎ早にされる。
茉里は付き合い始めた大学生の頃から、
淡々として落ち着いている女子学生だった。
それまで付き合ってきた女の子たちのように
自分の考えを押し付けたり
気に入らないと拗ねるということもした事がなかった。
その茉里が
一気に水を飲み干すと
俺に次々と質問を浴びせる。
「樹、聞こえてる?
その女の人はどこの誰なの?」
「同じ部署の事務補佐の子。」
「いつからなの?」
「、、、、」
いつからとは、、、
「私、少しあなたらしくない行動に違和感を持っていたのよ。」
「えっ、、、」
「あなたのカード明細。
私がチェックしているでしょう。あなたの口座から
引き落としができなくなって
慌ててしまって以来。」
「あぁ、俺が頼んだ。」
俺のカードからは
交際費や出張の際の立替払い、その他俺自身の身の回りの物などに使っている。
以前
仕事が立て込んだ時に年若い課の者たちに幾度となく
食事をご馳走して
口座残金額を
オーバーしてしまった事があり、
以来茉里に頼んで、
明細書と口座残高をチェックしてもらっていた。
「半年前ぐらいからレストランからの請求があって
結構毎月、月に2、3回。
それでも 私が見ているってわかっているから
やましいことではないんだろうな、って思っていたの。
でも 度重なって、やっぱりモヤモヤして
レストランを調べたりしたら、部下を引き連れていくような
居酒屋ではなく、本当に洒落たレストランでしかも
二人分のコース料理のお値段かなぁって。。。」
「。。。。」
そうだ
斉木を連れて行ったレストランでいつものようにカードで
支払っていた。
それは
ただ食事をしているという何のやましさも抱いてなかった故の
俺の行動だ。
「ましろが私のパソコンを借りているとき、どうしても私もパソコンを
使わなくてはいけない時はあなたのを借りていたわよね。」
「あぁ。。。」
「何気なく見た履歴にレストランの予約があって
あぁ、この人は自分でレストランを予約して、誰かと行っていたんだって、、、」
「。。。。」
「結婚してから、二人であなたがレストランを予約して、食事に行ったことなんてあったかしら?
ましろが生まれて、二人でレストランに食事に行ったこともないんじゃない?
それなのに
あなたは他の女の人のためにレストランを予約して、食事に行って、カードで支払って
私にそれを見せて、何がしたいのかしらね。
自分には大事な人がいるから察してくれって言いたい」
「違う!」
茉里の言葉を遮るように声を上げた。
手の中のコップから水が飛び出て、自分の手とズボンを濡らした。
「彼女 斉木は新卒でうちに来て2年目だけど、
はっきり言って仕事があまりできる方じゃない。
一生懸命で頑張っていたが、今年に入って失敗続きで、自信を無くしていた。
課の他の女性たちからも疎んじられていて、もう辞めるっていうところまで来ていた。
でも 今辞めたら本当に辛いだけの思いしか残らないから、もう少し頑張ってみろと
励ましたり、仕事を円滑に進めるためのアドバイスをしたりしていたんだ。
少し仕事ができるようになって、ご褒美ということで食事に誘った。」
「あなたが誘ったの?」
茉里の顔が大きく歪んだ。
「違うんだ。
斉木を好きだとかそういう感情ではなく、
本当にましろのように頑張ったご褒美というくらいの
意味しかなかった。」
「そうやって情に絆されていったわけ。。。」
「あの時期、俺は悩んでいた。」
「ええ。
いつもと違うあなたに私が近頃どうしたの?
悩みでもあるの?って尋ねていた頃ね。」
「あぁ、、、その悩みをもちろん斉木に言っていたわけではない。
でも、仕事がうまく行って
ご褒美にと食事に誘って、わかりやすく喜んで、わかりやすく俺を頼りにしている
彼女を見て少し癒されていた。。。」
「私には何でもない。
自分で考えることだから、しばらく放って置いてくれてって言っていたあなたが
その人には癒されていたわけね。
私はあなたの一番だと思っていたのに、とんだお笑い草だわ。
私でもましろでもなく、あなたを支えていたのが彼女なのね。
こんなに辛くて悔しいことはない。
おまけに今日はその娘に不倫現場をみられちゃって。」
茉里の顔が痛みで歪んでいく。
違う。
俺は君にそんな顔をさせたくって言ったんじゃない。
「ましろは今中三よ。
通っていた私立の中学校を辞めてまで、受験したい高校があるって頑張っているのに。
頑張っている子はその人だけじゃない!
自分の子供を励ますどころか、ご褒美をあげるどころか
親として最低な姿を見せて。。。」
心臓が痛い。。。
「あの子があなたを許すことはできないと思う。
きっと同じ家にも住めないと思う。あなたもましろも私も辛い。
特に受験期のましろの気持ちを思うと、あの子が言うように離婚しか
ないんじゃないかと思っている。」