薔薇の嵐が到来する頃 吹き抜ける物語 ~柚実17歳~
 途中から右京くんのハモりも入ってきた。
 ――自然だ。
 第一印象は、それだった。
 右京くんの歌声は、純ほど透き通ってはいないけれど、癖はなく、まっすぐな波線のよう。
 地声がガラガラとしていたから、歌うとこんな声になるとは思わなかった。
 それは純も一緒。いつもは低音ボイスなのに、歌うとクリアになる。
 ふたり、声が合っている。共鳴している。
 だけど煩くない。溶け合っている。
 お互いの声を邪魔していない。
 いいじゃん、このふたり。
 私はふたりが紡ぐメロディに身体を預け、多幸感に浸っていた。
 曲が終わると、私は拍手をした。盛大に。
 手だけじゃ足りなくて、足までばたばたさせた。
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