薔薇の嵐が到来する頃 吹き抜ける物語 ～柚実１７歳～

　この季節に鍋、なんて時期がおかしいかもしれないけれど、母がキムチ鍋を食べたいと言っていたので、今日の晩御飯はこれだ。
　初めからうどんを入れて、キムチうどん鍋にするつもり。
「私は国立大の医学部出身よ」
「医学部！？」
　私は思わず振り向いた。
「お母さん、お医者になりたかったの？　てか、そんなあたま良かったの？」
　初耳だ。母が医学部なんて。医者だなんて。
「お医者じゃなくて、看護師。医学部保健学科に在籍してた。ってか、ビール持ってきて～」
　う～っと伸びをして言う。
　私は豚肉を鍋にささっと入れて、手についた脂を洗い流して、冷蔵庫からビール缶を取り出した。
「看護師してたの？　どれくらい？」