薔薇の嵐が到来する頃 吹き抜ける物語 ~柚実17歳~
「ん~」
「瞬くんの大学行ったら?」
「何で今更瞬の名前が出てくるの」
「お母さんのお気に入り男子だから」
 森村瞬は、一時期この家に出入りしていた。泊まったこともあった。
 母が吐血し、救急車に同乗してくれたのも彼だ。
「東京だよ? 私大だよ? 無理だよ」
「柚実チャン、お利口サンじゃない」
「いやいや。それに、お金かかるし」
「お金の心配はしなくていい」
 こん、とビール缶をテーブルに置いて、母はきっぱりと言った。
 私はまた振り返る。
「お金の、心配は、しなくていい」
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