薔薇の嵐が到来する頃 吹き抜ける物語 ~柚実17歳~
 お酒に強い母は、ビール1本くらいで酔ったりはしない。
 その、意志の強い目を私に向けて、同じことをもう一回言った。
「――解った。ありがと」
 こころ強いな、母は強しとはよく云ったもんだ、と思いながら野菜の固い部分だけを鍋に入れ、キムチスープを入れ、火にかけた。
「今おつきあいしてる人はどうなの? 純くん、だっけ」
「純は音楽のことしかあたまにないからなぁ」
「そうなの。瞬くんと一緒じゃない」
「瞬よりずっと音楽バカだよ」
「じゃあ、音大とか? 音楽の専門学校とか行くのかしらねぇ」
 やはり母の考えることは私と同じだ。
「そうなんだよねぇ」
 鍋に蓋をして、煮立つのを待つ。
 手持無沙汰になった私は、思わず腕組みをしてしまう。
「柚実は何がしたいの?」
「う~ん」
「柚実は将来、何になりたいの?」
「看護師以外」
 看護師なんて、私には無理だ。女だらけの園なんて、私には耐えられない。
「うははは。言うね~。じゃ、ビールもう一本持ってきて」



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