薔薇の嵐が到来する頃 吹き抜ける物語 ~柚実17歳~
「ん」
 そう言いながらも、キリンから目を離さない純。
 二重だけれども、細い純の目。彼の目もくりくりと見開いている。
 何だか純も動物みたいで可愛らしい。
「目っていいよね。生命力溢れてて。子どもの目なんかも無垢で好きだな」
「目」
 よっぽどキリンに夢中なのか、彼は単語を発するのみだ。
 私は彼が飽きるまでここにいようと思った。
 ちゃっかり、彼の腕に巻きついたまま。
「待たせたな。行こうか」
「うん。次は何かな~?」
 おや、歩き出しても、純は私の腕を払いのけない。
 今日はトクベツってこと?
 私は嬉しくてスキップを踏んでしまった。
 すると彼は腕時計を見た。
「もうそろそろ、アルパカのエサ遣りの時間だ」
「あ、行かなきゃ。どこ」
 彼はパンフレットを広げ、場所を確認する。
「ちょっと歩くな。急ごう」
「うん」
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