アスミルセカイ

走って行った先は、
「これ…ライラック」
「ライラックって、花の形がハートの形してるから、フランスでは白いライラックは『青春のシンボル』として親しまれてて、花言葉は『友情』『思い出』らしいよ」
「…朝陽って、花好きなの?」
「え、まさか。ライラックしか知らん」
「なにそれ、ある意味すごいね。でもライラックが咲いてることも花言葉も知らなかった」
「すげえよな、ここの用務員。何でも植えるんだな」
私はすぐさま、カメラを向ける。
「固くならないで、まず好きなものから撮りなよ。汚くても綺麗でも絶対それはクラスの象徴になる。雫が合わせるんじゃなくて、みんなが合わせるんだよ。象徴だし」
朝陽はそれだけ言うと、また姿を消した。
(相変わらず、逃げ足が速いやつ)
けど、
「朝陽って案外しっかりしてるんだよなあ」

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