アスミルセカイ
(え、今の何…?)
零の謎行動に戸惑った私は、動揺し、リュックの中に荷物をしまい、部室へ向かう。
走っていたせいだ。
ドスッ
「わっ!!」
背の高い男子にぶつかった。
暖かい感じ。
見覚えのある部活のTシャツ。
「った…雫ちゃん?」
落ち着いた声に優しい目でこちらを見る朝陽。
私はその目と声で気づいた。
“私、この人のことが好きだ”
自覚したら意識していつもみたいに話せなくなるって分かっていたのに。
「…あ!ごめんっっ」
「うん。別に、俺は大丈夫」
「そっか…よかった…」
私は朝陽と話すことに耐えられなくなり、
「ごめん、じゃあ!」
そう言い、朝陽の進行方向と逆向きに走り出す。
その時。
「待って」
私の手首を掴む朝陽。
(待って、今絶対顔赤い…)
「雫」
いきなり呼び捨てにされ、私は何が起きているのか分からず、ただ朝陽を見る。
目は見れないけど。
「なんか変じゃね?大丈夫?」
「え!いや…別に」
だめだ。もう。
「赤くね?保健室行こ。熱あるかもしれんし」
違うよ。なんでいつもそうやって優しいの?
「朝陽くんのせいだよ」
「え?」
周りがもう見えない。
私の目には、
「朝陽くんが好き…!」
もう朝陽しか見えなかった。
その時、零は…。
「あ、零!」
鈴乃に声をかけられていた。
「…何?」
「写真部なんだよね?じゃあうちの部活の写真撮ってよ!」
「…」
「零…?」
「俺今それどこじゃないから」
「え、ちょっ零!?」
零は話しかけてくる鈴乃を無視し、部室に入った。
「零…?」
バタンッ
「なんだこれ」
「俺やっぱあいつのこと…」
心が動いたのは真夏のこと。