人見知りな私と悪役令嬢がフェードアウトしたら
理解は出来ても納得出来ない
「この馬鹿が、申し訳ない……私が同席するから、すまないが少しつきあってくれ」
「あ……はい……」
「アルス、逃げるなよ」
正直、逃げ出したかったが――また絡まれても嫌なので、私は渋々頷いた。
そんな私を影から受け取り、代わりに抱き上げるとラウルさんはアルスさん(ラウルさんの知り合いのようなので一応、さん付けしておく)に釘を刺した。おかげで家畜小屋を出た私達に、アルスさんは眉を顰めながらもついてきた。
(か、カナさん……)
(大丈夫。ラウルさんもいるからね?)
すっかり泣きそう、と言うか泣いている現世の私に心の中で話しかける。
正直、途方に暮れていたので助かった。年だけ取っていても、あんな風に動揺してしまうなんて。
(って、イザベルごめんね!? 余計、不安になっちゃったよね?)
今更だが、前世の私と現世の私は中で同居している状態だ。だから慌てて謝ると、現世の私の気配がふ、と柔らかくなった。
(……ううん。心配してくれて、嬉しかった。ありがとう、カナさん)
何て言うか、現世の私は本当、天使だなと私は思った。うん、語彙力無くなるくらい浄化された。
※
皆がいる畑や修道院の中には入らず、ラウルさんは少し歩いたところにある木の根元で足を止めた。守ってくれるつもりなのか、私のことは抱き上げたままで。
「アルスは元々、この修道院にいた孤児だ……だが十歳の時、光属性の魔法が使えることが解り、教会に引き取られた。次期教皇になる為にな」
「……そうなんですか」
「ああ……だけど! 彼女が現れたせいで、私は……っ」
「っ!?」
声を荒げて指差されたことで、反射的に体が強張る。
……だが、しかし。
「アルス、人を指差すな」
「痛っ」
ラウルさんが私を片手で抱き上げたまま、もう片方の手で私を指差したアルスさんの指を払った。無表情での行動に驚くが、更に驚いたのはアルスさんの反応だ。
「……悪かった」
顔は不機嫌そうに顰めているが、それでも謝罪の言葉を口にしたのだ。驚いてラウルさんを見ると、何でもないことのようにサラリと答えた。
「俺も、この修道院で育てられた孤児なので……幼なじみと言うか、兄弟みたいなものだ。まあ、あいつの属性が解って、教会に行ってからはそれぞれの道を進んでたが」
「……その道も、その子のせいで」
「うるさい。どうせ、何か言われた訳じゃないんだろう? 勝手に勘違いして、空回りしただけに決まってる。思い込みの激しい、お前のことだからな」
「うっ……」
「……この子はな。お前と違って、神兵になるしかなかった俺に、新たな道を示してくれた。そんな彼女を責めることは、俺が許さない」
「ラウルさん……」
キッパリ言い切ってくれたラウルさんに、感激しつつも切なくなった。それだけ、光属性以外の魔法は危険視されていたのかと。
そして、孤児故にアルスさんが自分の立ち位置に執着していることも解った。確かに、そこにいきなりぽっと出の私が現れたら戦々恐々するだろう。
「君は、ラウルまでたぶらかしたのか!?」
だが、理解は出来ても未だに現世の私を悪者にしてくるアルスさ――アルスに、私はたまらず切れた。
「あ……はい……」
「アルス、逃げるなよ」
正直、逃げ出したかったが――また絡まれても嫌なので、私は渋々頷いた。
そんな私を影から受け取り、代わりに抱き上げるとラウルさんはアルスさん(ラウルさんの知り合いのようなので一応、さん付けしておく)に釘を刺した。おかげで家畜小屋を出た私達に、アルスさんは眉を顰めながらもついてきた。
(か、カナさん……)
(大丈夫。ラウルさんもいるからね?)
すっかり泣きそう、と言うか泣いている現世の私に心の中で話しかける。
正直、途方に暮れていたので助かった。年だけ取っていても、あんな風に動揺してしまうなんて。
(って、イザベルごめんね!? 余計、不安になっちゃったよね?)
今更だが、前世の私と現世の私は中で同居している状態だ。だから慌てて謝ると、現世の私の気配がふ、と柔らかくなった。
(……ううん。心配してくれて、嬉しかった。ありがとう、カナさん)
何て言うか、現世の私は本当、天使だなと私は思った。うん、語彙力無くなるくらい浄化された。
※
皆がいる畑や修道院の中には入らず、ラウルさんは少し歩いたところにある木の根元で足を止めた。守ってくれるつもりなのか、私のことは抱き上げたままで。
「アルスは元々、この修道院にいた孤児だ……だが十歳の時、光属性の魔法が使えることが解り、教会に引き取られた。次期教皇になる為にな」
「……そうなんですか」
「ああ……だけど! 彼女が現れたせいで、私は……っ」
「っ!?」
声を荒げて指差されたことで、反射的に体が強張る。
……だが、しかし。
「アルス、人を指差すな」
「痛っ」
ラウルさんが私を片手で抱き上げたまま、もう片方の手で私を指差したアルスさんの指を払った。無表情での行動に驚くが、更に驚いたのはアルスさんの反応だ。
「……悪かった」
顔は不機嫌そうに顰めているが、それでも謝罪の言葉を口にしたのだ。驚いてラウルさんを見ると、何でもないことのようにサラリと答えた。
「俺も、この修道院で育てられた孤児なので……幼なじみと言うか、兄弟みたいなものだ。まあ、あいつの属性が解って、教会に行ってからはそれぞれの道を進んでたが」
「……その道も、その子のせいで」
「うるさい。どうせ、何か言われた訳じゃないんだろう? 勝手に勘違いして、空回りしただけに決まってる。思い込みの激しい、お前のことだからな」
「うっ……」
「……この子はな。お前と違って、神兵になるしかなかった俺に、新たな道を示してくれた。そんな彼女を責めることは、俺が許さない」
「ラウルさん……」
キッパリ言い切ってくれたラウルさんに、感激しつつも切なくなった。それだけ、光属性以外の魔法は危険視されていたのかと。
そして、孤児故にアルスさんが自分の立ち位置に執着していることも解った。確かに、そこにいきなりぽっと出の私が現れたら戦々恐々するだろう。
「君は、ラウルまでたぶらかしたのか!?」
だが、理解は出来ても未だに現世の私を悪者にしてくるアルスさ――アルスに、私はたまらず切れた。