人見知りな私と悪役令嬢がフェードアウトしたら
衝撃
無事にフェードアウトが決定したが、流石に今すぐという訳ではないらしい。
「行儀見習いのように、短期という訳ではない。手続きがあるので数日、待つように。正式な日取りが決まったら、また伝える」
「はい」
「とは言え、まずは我が家に来たばかりのミア達が優先だ。新しい環境に、少しでも早く馴染めるようにせねばな……お前の食事は、部屋に運ばせる。荷物も、侍女に纏めさせるように」
「……はい」
返事をしつつ、私は内心呆れ返っていた。
そりゃあ、仮にも貴族令嬢。しかも幼女なんで、修道院行きは父親の手を借りるしかないことは解る。それ故、今日すぐ行ける訳ではないことも。
(だけど、今の発言いる? 本当、デリカシーなさ過ぎ……まあ、薮蛇になったら困るから、言わないけど)
いくら美形でも、前世の私より年上みたいなのに(私は享年二十四歳だった)頭がお花畑なのは頂けない。そう思っていたら、不意に声がかけられた。
「イザベル様」
「……?」
「お部屋に戻りましょう」
無表情な中年女性が、戸惑う私を促してくる。長い髪をキッチリ結い上げ、エプロンドレス姿なので現世父の言うところの『侍女』さんかな? キツそうな感じだけど正直、自分の部屋も解らなかったから助かった。
「ええ」
とは言え、自分のキャラが解らない以上、下手にお礼を言っていいかも解らない。
でも流石に無視は出来ず、短くそれだけ返すと――何故か大きく目を見開かれ、すぐに元の無表情に戻った。
え? 最低限の挨拶ですら駄目なの? まだ鏡を見ていないので、見た目の問題なのか今までの行動のせいなのか判断出来ない。
こうなると、現世父の思い通りになるのは癪だけど極力、引きこもるしかないか。
(まあ、修道院なら周りは知らない人ばっかりだから……高校デビューならぬ、修道院デビューするしかないか)
とは言え、人見知りは継続中だから目立たないよう頑張るけどね。
そう心の中で決意した私は、侍女さんのおかげで無事に部屋に辿り着き。夕食前にお茶を、と言って一人残されたところで、鏡で自分の顔を見て驚いた。
「……びっ……!」
思わず叫びそうになり、私は慌てて口を押さえた。
そうすると、大きな琥珀色の目を更に大きく見開いた女の子も、同じように口を押さえる。
いや、手足を見る限りおデブではなかったけど。大量のそばかすとか、目つきが悪いとかかなと思ってたんだよね。
でもサラサラの黒髪と、雪みたいに白い肌。今は隠れてるけど、唇は鮮やかに赤く――って、白雪姫クオリティじゃない!?
「え? 現世の私、無茶苦茶可愛いってか、美人さんだね!? 何、黒髪が駄目だとか? でも、それだけでこんな美幼女蔑ろにするとか、鬼悪魔としか……っ!?」
鏡だけど、初めて見る顔なんですっかり現世の私に話しかけると言うか、湧き上がった衝撃をぶつける状態になった。
けれど、そんな感情の高ぶりが鍵になったのか――今までの現世の私の記憶が、一気に湧き上がってきて。
立ってられなくなった私は、その場に崩れ落ちて目を閉じた。
「行儀見習いのように、短期という訳ではない。手続きがあるので数日、待つように。正式な日取りが決まったら、また伝える」
「はい」
「とは言え、まずは我が家に来たばかりのミア達が優先だ。新しい環境に、少しでも早く馴染めるようにせねばな……お前の食事は、部屋に運ばせる。荷物も、侍女に纏めさせるように」
「……はい」
返事をしつつ、私は内心呆れ返っていた。
そりゃあ、仮にも貴族令嬢。しかも幼女なんで、修道院行きは父親の手を借りるしかないことは解る。それ故、今日すぐ行ける訳ではないことも。
(だけど、今の発言いる? 本当、デリカシーなさ過ぎ……まあ、薮蛇になったら困るから、言わないけど)
いくら美形でも、前世の私より年上みたいなのに(私は享年二十四歳だった)頭がお花畑なのは頂けない。そう思っていたら、不意に声がかけられた。
「イザベル様」
「……?」
「お部屋に戻りましょう」
無表情な中年女性が、戸惑う私を促してくる。長い髪をキッチリ結い上げ、エプロンドレス姿なので現世父の言うところの『侍女』さんかな? キツそうな感じだけど正直、自分の部屋も解らなかったから助かった。
「ええ」
とは言え、自分のキャラが解らない以上、下手にお礼を言っていいかも解らない。
でも流石に無視は出来ず、短くそれだけ返すと――何故か大きく目を見開かれ、すぐに元の無表情に戻った。
え? 最低限の挨拶ですら駄目なの? まだ鏡を見ていないので、見た目の問題なのか今までの行動のせいなのか判断出来ない。
こうなると、現世父の思い通りになるのは癪だけど極力、引きこもるしかないか。
(まあ、修道院なら周りは知らない人ばっかりだから……高校デビューならぬ、修道院デビューするしかないか)
とは言え、人見知りは継続中だから目立たないよう頑張るけどね。
そう心の中で決意した私は、侍女さんのおかげで無事に部屋に辿り着き。夕食前にお茶を、と言って一人残されたところで、鏡で自分の顔を見て驚いた。
「……びっ……!」
思わず叫びそうになり、私は慌てて口を押さえた。
そうすると、大きな琥珀色の目を更に大きく見開いた女の子も、同じように口を押さえる。
いや、手足を見る限りおデブではなかったけど。大量のそばかすとか、目つきが悪いとかかなと思ってたんだよね。
でもサラサラの黒髪と、雪みたいに白い肌。今は隠れてるけど、唇は鮮やかに赤く――って、白雪姫クオリティじゃない!?
「え? 現世の私、無茶苦茶可愛いってか、美人さんだね!? 何、黒髪が駄目だとか? でも、それだけでこんな美幼女蔑ろにするとか、鬼悪魔としか……っ!?」
鏡だけど、初めて見る顔なんですっかり現世の私に話しかけると言うか、湧き上がった衝撃をぶつける状態になった。
けれど、そんな感情の高ぶりが鍵になったのか――今までの現世の私の記憶が、一気に湧き上がってきて。
立ってられなくなった私は、その場に崩れ落ちて目を閉じた。