人見知りな私と悪役令嬢がフェードアウトしたら
気にするところがズレていると思う
「初めまして。ブロワ侯爵家の、ケインと申します」
「初めまして。イザベルでございます」
それから、数日後。私は、院長室で宰相子息――ケイン様と、挨拶を交わしていた。
場所は前回同様、院長室だ。護衛はいたが、今回は部屋の外で待機している。そして暴風雨も来ると言ったが、私が全力で拒否した。初対面の相手と話すだけでもしんどいのに、更に暴風雨まで来たら辛すぎる。
約束していたので、労働の途中で抜けてきた訳ではない。もっとも、他の皆は労働をしているので、私の罪悪感は半端ないが。
(早く終わらせて、仕事に戻ろう……いや、まあ、アントワーヌ様とビアンカ様は「社交も労働の一つ」って笑ってくれたけど)
だがやはり他の面々を働かせて、自分だけおしゃべりしている訳にはいかない。
心の中でそう結論付けると、私はケイン様を真っ直に見返した。
サラサラの黒い髪と、黒い瞳。同じ年だと聞いているが、笑顔はなく思いつめた表情をしている。でも容姿が整っているので、それさえ保護欲を掻き立てるのだから大したものだ。
(この前の脳筋もだけど、何でこんなグッドルッキングショタばっかりなんだろう?)
内心、首を傾げているとケインは同席していたクロエ様へと目をやった。そしてしばし躊躇した後、口を開く。
「院長様。まずは、この場を設けてくれたことを感謝します……その上で、お二人にお願いします。どうか、これから僕が話すことについては他言無用で」
「ええ」
「解りました」
ケイン様からの申し出に、クロエ様と私は頷いた。そんな私達をしばし睨むように見つめた後、ケイン様は決心したように話しかけてきた。
「どうして聖女様は、アルスやエドガーみたいな馬鹿の話を、優しく聞いてあげられるんですか?」
「……えっ?」
「どうして聖女様は」
「あの、聞こえなかった訳ではありません」
同じ言葉をくり返そうとしたケインを、私は止めた。そう、聞こえてはいたが咄嗟に内容を理解出来なかったのだ。そんな私に、ケインが更にとんでもないことを言ってくる。
「確かに僕は、子供です。ですがそんな子供の僕より、周りの人間の方がもっと物を知らず、感情を優先させて行動する馬鹿ばかりです。父上からは、次期宰相となるのならこういう言動を改めるように言われていますが……余計な衝突を避ける為、口にはしていませんが。僕には、自分が間違っているとは思えないのです」
一気に言って、ケインはハーブティーを口にした。
言いたいことを言ってスッキリしたのか、先程のような思い詰めた様子はない。だが、とんでもないことを言っているのに、ケロリとしているケインに対して私は思った。
(この子……頭は良いかもしれないけど、子供だ。仮に転生者だとしても、前世も子供だ)
そうじゃなければ、いくら他言無用と約束したからと言って、私達にこんなことを言わない。そう、わざわざ自分を悪く思われるようなことを。
(……もしかして、ここの世界って顔の良さと性格の良さが反比例するのかな?)
あと、そんな馬鹿なことを思いついてしまい、妙な説得力に私は内心で頭を抱えた。
「初めまして。イザベルでございます」
それから、数日後。私は、院長室で宰相子息――ケイン様と、挨拶を交わしていた。
場所は前回同様、院長室だ。護衛はいたが、今回は部屋の外で待機している。そして暴風雨も来ると言ったが、私が全力で拒否した。初対面の相手と話すだけでもしんどいのに、更に暴風雨まで来たら辛すぎる。
約束していたので、労働の途中で抜けてきた訳ではない。もっとも、他の皆は労働をしているので、私の罪悪感は半端ないが。
(早く終わらせて、仕事に戻ろう……いや、まあ、アントワーヌ様とビアンカ様は「社交も労働の一つ」って笑ってくれたけど)
だがやはり他の面々を働かせて、自分だけおしゃべりしている訳にはいかない。
心の中でそう結論付けると、私はケイン様を真っ直に見返した。
サラサラの黒い髪と、黒い瞳。同じ年だと聞いているが、笑顔はなく思いつめた表情をしている。でも容姿が整っているので、それさえ保護欲を掻き立てるのだから大したものだ。
(この前の脳筋もだけど、何でこんなグッドルッキングショタばっかりなんだろう?)
内心、首を傾げているとケインは同席していたクロエ様へと目をやった。そしてしばし躊躇した後、口を開く。
「院長様。まずは、この場を設けてくれたことを感謝します……その上で、お二人にお願いします。どうか、これから僕が話すことについては他言無用で」
「ええ」
「解りました」
ケイン様からの申し出に、クロエ様と私は頷いた。そんな私達をしばし睨むように見つめた後、ケイン様は決心したように話しかけてきた。
「どうして聖女様は、アルスやエドガーみたいな馬鹿の話を、優しく聞いてあげられるんですか?」
「……えっ?」
「どうして聖女様は」
「あの、聞こえなかった訳ではありません」
同じ言葉をくり返そうとしたケインを、私は止めた。そう、聞こえてはいたが咄嗟に内容を理解出来なかったのだ。そんな私に、ケインが更にとんでもないことを言ってくる。
「確かに僕は、子供です。ですがそんな子供の僕より、周りの人間の方がもっと物を知らず、感情を優先させて行動する馬鹿ばかりです。父上からは、次期宰相となるのならこういう言動を改めるように言われていますが……余計な衝突を避ける為、口にはしていませんが。僕には、自分が間違っているとは思えないのです」
一気に言って、ケインはハーブティーを口にした。
言いたいことを言ってスッキリしたのか、先程のような思い詰めた様子はない。だが、とんでもないことを言っているのに、ケロリとしているケインに対して私は思った。
(この子……頭は良いかもしれないけど、子供だ。仮に転生者だとしても、前世も子供だ)
そうじゃなければ、いくら他言無用と約束したからと言って、私達にこんなことを言わない。そう、わざわざ自分を悪く思われるようなことを。
(……もしかして、ここの世界って顔の良さと性格の良さが反比例するのかな?)
あと、そんな馬鹿なことを思いついてしまい、妙な説得力に私は内心で頭を抱えた。