人見知りな私と悪役令嬢がフェードアウトしたら
歩み寄りには、共通の話題から
主人公視点&ヒロイン視点
※
こうして母親、それから使用人達の協力を得て、エマは月に一回、修道院に来るようになった。
ちなみにエマが寄り添い部屋にいる間はと言うと、母のミアは焼き菓子作りや夕食の支度を手伝ったりしている。慰問と言うと普通は見学までだが、屋敷では自分で料理やお菓子作りが出来ない。だからそれを気兼ねなく出来ることを、ミアはとても喜んでいるそうだ。
そして、話は前後するのだが。
一か月前。王宮での勉強会を数回済ませたエマは、今日のようにやって来て日本語で私に言った。
「無礼にならない程度に、地を出した……と言うか、イザベル様の話をしてきました」
「……えっ?」
「ユリウス様以外は、イザべル様に会っているので……話を聞きたいと言ったら、喜んで話してくれました」
「えっ、待って?」
「イザベル様の話を聞けた上、皆様とも距離が近づけて有意義な時間を過ごしました!」
「あ、はい」
にこにこ、にこにこ。
壁でエマの顔は見えないが、めちゃくちゃ笑顔で言っているのが伝わって、私はそうとして答えられなかった。
そんな私に、エマは攻略対象達との歩み寄りについて話してくれた。
※
イザベル様と会い、母親に頼んで父親から慰問の許可を得て。
一週間後。エマは再び、王宮へと向かった。そしてユリウス様達攻略対象の前で、前回同様カーテシーをして――前回と違い、声をかけられないので黙っていることにした。身分が下の者から、上の者に声をかけるのは無礼とされている。
しばらくの沈黙の後、ユリウス様から「今日は、大丈夫か?」と尋ねられた。それに答える形で、わたしは口を開いて話し出した。
「ありがとうございます。大丈夫です。先日は、失礼致しました……改めて、今日からよろしくお願いします」
「……体が弱いなら、無理に来るべきではないのでは?」
「ケイン様」
そんなわたしにそう言ったのは、ユリウス様――ではなく、ケイン様だった。ユリウス様を差し置いてなのも驚いたが、先週以上に突き放した感じなのも驚いた。流石に、アルス様が窘めるようにケイン様の名前を呼ぶ。
(まあ、でも、ケイン様は元々、典型的な貴族だし……だから、攻略するまでは半分平民のヒロインにツンツンだし)
逆にそのツンから、次第にヒロインだけに見せるデレのギャップがたまらなかったので気にはならない。
先週はゲームとの相違点に驚いたが、そもそもイザベル様がゲームと色々違うので、今ではとても納得出来る。
「お気遣い、感謝します……あの、皆様はお姉さまのことをご存じなんですよね?」
「えっ……?」
「ええ、まあ」
「知ってるぞ!」
「……私は、会っていない」
「じゃあ、殿下はわた……私と一緒に、お姉さまの話を聞いて下さいますか? 別々に暮らしているので、少しでもお姉さまのことを知りたいのです」
そして共通な話題で距離を縮めたいのと、イザベル様(推し)の話を聞きたいのとで――わたしは前半はユリウス様に、それから後半はアルス様、ケイン様、エドガー様にそう言った。
……結果、自己紹介の代わりにわたし達はイザベル様の話をして交流を深めた。
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こうして母親、それから使用人達の協力を得て、エマは月に一回、修道院に来るようになった。
ちなみにエマが寄り添い部屋にいる間はと言うと、母のミアは焼き菓子作りや夕食の支度を手伝ったりしている。慰問と言うと普通は見学までだが、屋敷では自分で料理やお菓子作りが出来ない。だからそれを気兼ねなく出来ることを、ミアはとても喜んでいるそうだ。
そして、話は前後するのだが。
一か月前。王宮での勉強会を数回済ませたエマは、今日のようにやって来て日本語で私に言った。
「無礼にならない程度に、地を出した……と言うか、イザベル様の話をしてきました」
「……えっ?」
「ユリウス様以外は、イザべル様に会っているので……話を聞きたいと言ったら、喜んで話してくれました」
「えっ、待って?」
「イザベル様の話を聞けた上、皆様とも距離が近づけて有意義な時間を過ごしました!」
「あ、はい」
にこにこ、にこにこ。
壁でエマの顔は見えないが、めちゃくちゃ笑顔で言っているのが伝わって、私はそうとして答えられなかった。
そんな私に、エマは攻略対象達との歩み寄りについて話してくれた。
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イザベル様と会い、母親に頼んで父親から慰問の許可を得て。
一週間後。エマは再び、王宮へと向かった。そしてユリウス様達攻略対象の前で、前回同様カーテシーをして――前回と違い、声をかけられないので黙っていることにした。身分が下の者から、上の者に声をかけるのは無礼とされている。
しばらくの沈黙の後、ユリウス様から「今日は、大丈夫か?」と尋ねられた。それに答える形で、わたしは口を開いて話し出した。
「ありがとうございます。大丈夫です。先日は、失礼致しました……改めて、今日からよろしくお願いします」
「……体が弱いなら、無理に来るべきではないのでは?」
「ケイン様」
そんなわたしにそう言ったのは、ユリウス様――ではなく、ケイン様だった。ユリウス様を差し置いてなのも驚いたが、先週以上に突き放した感じなのも驚いた。流石に、アルス様が窘めるようにケイン様の名前を呼ぶ。
(まあ、でも、ケイン様は元々、典型的な貴族だし……だから、攻略するまでは半分平民のヒロインにツンツンだし)
逆にそのツンから、次第にヒロインだけに見せるデレのギャップがたまらなかったので気にはならない。
先週はゲームとの相違点に驚いたが、そもそもイザベル様がゲームと色々違うので、今ではとても納得出来る。
「お気遣い、感謝します……あの、皆様はお姉さまのことをご存じなんですよね?」
「えっ……?」
「ええ、まあ」
「知ってるぞ!」
「……私は、会っていない」
「じゃあ、殿下はわた……私と一緒に、お姉さまの話を聞いて下さいますか? 別々に暮らしているので、少しでもお姉さまのことを知りたいのです」
そして共通な話題で距離を縮めたいのと、イザベル様(推し)の話を聞きたいのとで――わたしは前半はユリウス様に、それから後半はアルス様、ケイン様、エドガー様にそう言った。
……結果、自己紹介の代わりにわたし達はイザベル様の話をして交流を深めた。