人見知りな私と悪役令嬢がフェードアウトしたら
ごきげんよう
「よく来たな、聖女イザベル」
現世父経由ではなく、直接話しかけられたのに内心、驚きつつも私は静かに言葉を返した。
「おそれいります」
「去年の働きは、見事だったぞ」
「とんでもないです」
「いやいや、謙遜するな」
「陛下の言う通りよ……それにしても、聖女様は聡明なだけではなく、とても可愛らしいのね」
「恐縮です」
「今年も、励むように……ジェームスもな」
「……はっ」
結局、国王夫妻はほぼ私にだけ話しかけ、最後だけ現世父に声をかけた。新年のパーティーは前年、活躍したり話題になった者が呼ばれると聞いていたが、今回は私が主役だという訳である。
(エマからも、去年のパーティーについて話は聞いてたけど……その時は家に戻った父との対面と、婚約者候補のエマを見る為だったみたいだもんね)
そして今回、婚約者として確定したので、エマはユリウスと共にいる。そう思っていると、国王からエマと殿下の婚約が発表された。そして拍手で祝福された後、エマ達はこちらへとやってきた。
「お姉さま、お疲れ様でした」
「会うのは初めてだな、聖女」
「おそれいります」
「聖女様。教皇様が、話したいそうだ」
「僕の父もです」
「俺の父もだっ」
その後は、暴風雨達の保護者に挨拶をした。
教皇に宰相、そして騎士団総長――エマにお願いしたのは、国の実力者である彼らに挨拶出来るようにだったが、無事に叶ったようだ。
国の実力者達への案内を終えたところで、今度は寄り添い部屋関係や生活魔法関係の人達への挨拶となる。
そして一段落したところで、私は会場を去ることにした。一応、会場には軽食も用意されているが正直、ドレスを汚すかもと思うと気が気でない。だから私は、傍らの現世父にだけ聞こえる声で声をかけた。
「お父様。そろそろお暇致します」
「……満足か?」
「えっ?」
「親に頼らず、陛下達や貴族達から自分だけ声をかけられて……満足かと、聞いている」
返されたのも、周囲に聞こえないように小声だった。まあ、僻みなので大声で言われた方が困るので良しとする。
「……ええ、大満足です」
「っ!?」
だから本音を返すと、現世父はギョッとしたようにこちらを見た。
何故、驚くのだろう? 言い返されると、思っていなかったのだろうか――満足するに、決まっているではないか。
無視され、放置されていた現世の私が、元凶である現世父よりも優遇された。しかも、周りの支えが大きいが、現世父の妨害に負けずに対応出来た。
派手に大恥をかかせた訳ではないので、ネット小説にあるような『ざまぁ』ではない。けれど、大の男を幼女が添え物にしたのだから『ぎゃふん』くらいにはなっただろうか?
(ありがとう、カナさん)
そう思っていると、私――いや、現世の私が、声に出さずにそう言って現世父から手を離した。
「お父様、ごきげんよう」
家を出た時とは違い、今回は現世の私が訣別の意味を込めて、現世父にそう告げた。
そして現世父にカーテシーをし、ドレスを翻すと会場を出て、待っていてくれたラウルさんの元へと向かった。
現世父経由ではなく、直接話しかけられたのに内心、驚きつつも私は静かに言葉を返した。
「おそれいります」
「去年の働きは、見事だったぞ」
「とんでもないです」
「いやいや、謙遜するな」
「陛下の言う通りよ……それにしても、聖女様は聡明なだけではなく、とても可愛らしいのね」
「恐縮です」
「今年も、励むように……ジェームスもな」
「……はっ」
結局、国王夫妻はほぼ私にだけ話しかけ、最後だけ現世父に声をかけた。新年のパーティーは前年、活躍したり話題になった者が呼ばれると聞いていたが、今回は私が主役だという訳である。
(エマからも、去年のパーティーについて話は聞いてたけど……その時は家に戻った父との対面と、婚約者候補のエマを見る為だったみたいだもんね)
そして今回、婚約者として確定したので、エマはユリウスと共にいる。そう思っていると、国王からエマと殿下の婚約が発表された。そして拍手で祝福された後、エマ達はこちらへとやってきた。
「お姉さま、お疲れ様でした」
「会うのは初めてだな、聖女」
「おそれいります」
「聖女様。教皇様が、話したいそうだ」
「僕の父もです」
「俺の父もだっ」
その後は、暴風雨達の保護者に挨拶をした。
教皇に宰相、そして騎士団総長――エマにお願いしたのは、国の実力者である彼らに挨拶出来るようにだったが、無事に叶ったようだ。
国の実力者達への案内を終えたところで、今度は寄り添い部屋関係や生活魔法関係の人達への挨拶となる。
そして一段落したところで、私は会場を去ることにした。一応、会場には軽食も用意されているが正直、ドレスを汚すかもと思うと気が気でない。だから私は、傍らの現世父にだけ聞こえる声で声をかけた。
「お父様。そろそろお暇致します」
「……満足か?」
「えっ?」
「親に頼らず、陛下達や貴族達から自分だけ声をかけられて……満足かと、聞いている」
返されたのも、周囲に聞こえないように小声だった。まあ、僻みなので大声で言われた方が困るので良しとする。
「……ええ、大満足です」
「っ!?」
だから本音を返すと、現世父はギョッとしたようにこちらを見た。
何故、驚くのだろう? 言い返されると、思っていなかったのだろうか――満足するに、決まっているではないか。
無視され、放置されていた現世の私が、元凶である現世父よりも優遇された。しかも、周りの支えが大きいが、現世父の妨害に負けずに対応出来た。
派手に大恥をかかせた訳ではないので、ネット小説にあるような『ざまぁ』ではない。けれど、大の男を幼女が添え物にしたのだから『ぎゃふん』くらいにはなっただろうか?
(ありがとう、カナさん)
そう思っていると、私――いや、現世の私が、声に出さずにそう言って現世父から手を離した。
「お父様、ごきげんよう」
家を出た時とは違い、今回は現世の私が訣別の意味を込めて、現世父にそう告げた。
そして現世父にカーテシーをし、ドレスを翻すと会場を出て、待っていてくれたラウルさんの元へと向かった。