ちょっと大人だからって、ずるい。



――と、いうわけで

朱莉と私が大親友になるのは別の話として


由緒正しいおうちには、門限がある。



「けど遥香、あんたも早く帰りなよ?いくら門限がないとはいえ、その制服着てるだけで危ないんだからね。それに――」


「うん、分かってるよ。あとちょっと、歴史覚えたら帰るから!」



いつもの朱莉の小言が始まりそうだったので、早めに言葉を遮った。


朱莉が心配してくれている理由は、私の名前にある。





―――私の名前、七瀬遥香。





”七瀬グループ”社長”七瀬修司(しゅうじ)”の娘の名前である。



”七瀬グループ”は、代々続く大きな金融財閥で、総資産額は常に日本1位2位を争っている。


どんな事業をしているかを言いだせばキリがない。


銀行をはじめとして、レストラン経営だったり、ホテル経営だったり、不動産経営だったり……


日本で”七瀬”の名前を知らない人は、きっといない。


私は、それほどまでに有名なグループ会社の娘。


それゆえに、朱莉は心配してくれているのだ。

< 15 / 57 >

この作品をシェア

pagetop