ちょっと大人だからって、ずるい。
――と、いうわけで
朱莉と私が大親友になるのは別の話として
由緒正しいおうちには、門限がある。
「けど遥香、あんたも早く帰りなよ?いくら門限がないとはいえ、その制服着てるだけで危ないんだからね。それに――」
「うん、分かってるよ。あとちょっと、歴史覚えたら帰るから!」
いつもの朱莉の小言が始まりそうだったので、早めに言葉を遮った。
朱莉が心配してくれている理由は、私の名前にある。
―――私の名前、七瀬遥香。
”七瀬グループ”社長”七瀬修司”の娘の名前である。
”七瀬グループ”は、代々続く大きな金融財閥で、総資産額は常に日本1位2位を争っている。
どんな事業をしているかを言いだせばキリがない。
銀行をはじめとして、レストラン経営だったり、ホテル経営だったり、不動産経営だったり……
日本で”七瀬”の名前を知らない人は、きっといない。
私は、それほどまでに有名なグループ会社の娘。
それゆえに、朱莉は心配してくれているのだ。