ちょっと大人だからって、ずるい。
背後から私の首に手を回し銃を突き付けているので、相手がどんな顔をしているかは確認できない。
分かるのは、私よりも高い身長で、首に回されている腕が筋肉質であること。
聞いたことのない、低い声をしていること。
黒い服と黒い手袋を着用していること。
「…なに、?」
酷く掠れた声が出た。
じわりと汗をかいている掌をぎゅっと握りしめる。
とりあえず落ち着いて、質問を聞いてみよう。
何が目的なのか、聞こうじゃないか。
今すぐ殺されることは、多分ない。
落ち着け、大丈夫。
「矢野 茅を探している。知っている情報を全部吐け。」
「え?」
矢野 茅?
誰だそれは。
クラスメイトにも、そんな名前の人はいない。
パパの付き添いで色んなパーティーにも出向いているが、そんな名前の人はいなかったはずだ。