ちょっと大人だからって、ずるい。


「…知らない」



本当に知らない。


なら、どうして私を?

人間違い?





――バンッ!





突然耳元で破裂音が鳴り、右腕の二の腕あたりが熱くなった。



「嘘をつくな…!さっき喋っていただろ!!」



少し冷静さを失った、男の声が聞こえる。




先ほどの炸裂音は何だったのか。

何故こんなにも二の腕が熱いのか。



思考することを後回しにして、男が冷静さを失ったその一瞬のうちに私はするりと首に巻かれた腕から抜け出した。




「っ!待て!!」




頭の中は真っ白で、この後どうするかなんて何も考えていなかったけれど
とにかく走った。



しかし足がもつれて、上手く走れない。

まずい、このままじゃ追いかけてきている男に追いつかれ……





……あれ、追いかけて…来てる?



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