ちょっと大人だからって、ずるい。
背後の男の気配を感じない。
完全に勘だが、追いかけてきていない気がする。
走るペースを落とし、後ろを振り返ろうとすると
何か、少しだけやわらかいものに体が激突した。
「んぐっ」
鼻が折れ曲がるかと思うくらい結構な勢いで、顔面から激突した。
いや、何なら鼻は折れ曲がったに違いない。
「…痛ったぁ……」
ひりひりとする鼻を抑えながら、ぶつかった物体を見上げると
「あ、爆笑茶髪ロン毛…」
「は?…あれれ?君は確かお昼のしりもち女子高生、遥香ちゃ………ッ!おい!湊都!」
昼間に私がしりもちをついたときに大爆笑していた、茶髪ロン毛さんだった。
私を見るなり、青ざめた表情で湊都の名前を呼ぶ。
え?湊都?
ていうか、なんでこんな所に爆笑茶髪ロン毛さんが?