ちょっと大人だからって、ずるい。
「はるちん、大丈夫だよ」
相変わらず妖艶な涙ボクロ。少し垂れている目元が、優しく笑う。
「泊里さんにも連絡したし、学校にも連絡入れといたよ。はるちんが七瀬家のお嬢様だったってのは、ちょっとびっくりだったけどねぇ〜」
優しい声と、妙に間延びした喋り方に、何故か安心し、冷静さを取り戻す。
「どうして泊里のことを知ってるの?」
七瀬家は有名財閥だからともかく、七瀬家の一使用人である泊里のことを知っているだなんておかしい。
「湊都から聞いたんだよ〜。それに、七瀬家にはよくお世話になってるから」
「え?」
「とにかく、大丈夫だよ〜って事。はるちんはひとまずゆーっくりパンケーキ食べな。ほら、あーん」
「むぐっ…」
楓葉によって強引に口に突っ込まれたパンケーキをモグモグしながら昨日の出来事を思い返した。