精霊たちのメサイア
13.世界樹の涙
13.世界樹の涙
時は忙しなく、そして賑やかに過ぎていった。日々のルーティンは大体決まってはいたものの、空いている時間はお母様か精霊たちと過ごすことが多かった。
精霊たちに歌を聴かせるのは別に精霊の森じゃなくてもいいらしく、温室にピアノを置いてもらってそこで演奏をするようになった。基本温室の中でしか精霊たちは姿を現さないから、精霊たちの存在を知っているのは両親、サラ、執事長のジェルマンだけ。精霊たちもこの4人とは仲良くしてくれる。私の大切な人たちだと分かってるのかもしれない。
そんな楽しい時間を過ごしていると驚くほど時間が経つのはあっという間で、来週には社交界デビューの日が迫っていた。デビュタントのパートナーはテオが引き受けてくれた。本当であれば恋人や婚約者、もしくは男友達にお願いするところだけど、生憎私にそんな相手はいない。お父様が付き添ってくれるものだと思っていたから、パートナーはテオにお願いしているとお父様から聞いた時には頭の中が真っ白になった。そんな私の様子を心配してか、お父様が何度かテオと会う機会を作ってくれて、今では緊張することなく話ができるまでになった。
ヴァレリー侯爵家に着くと、真っ先に出迎えてくれるのはジュリオだ。侯爵家に来ている間は精霊たちに歌を聴かせるわけにもいかず、アルファが迎えに来ては精霊の森へ連れて行ってくれる。
「これを渡しておこう」
「これ……何?」
精霊の森で精霊たちに歌を聴かせた後精霊たちと戯れていると、手のひらの中にすっぽり収まるほどの小さな小瓶を渡してきた。
「世界樹の涙だ」
受け取って中の液体を見ると、キラキラと輝いている。
「これを飲めばどんな病いも呪いも怪我も治すことができる。 手足を失ったとしても、再生される」
「え!? 万能薬ってこと!?」
「死者を蘇らせる事はできないがな。 なんにせよ、つねに持ち歩け。 いいな?」
「あ、うん……ありがとう」
「この世界樹の涙の所有者はレイラになっている。 この小瓶は普通の人間にはただの瓶にしか見えない。 精霊、精霊の契約者は目にする事ができるが、蓋を開け使うことができるのはレイラだけだ。 だが、レイラが世界樹の涙を誰かに譲渡すれば、その者が所有者となる」
簡単に言えば、今は私しか使えないけど、私があげたらその人しか使えないってことよね?
「精霊の契約者って何?」
「人間は精霊の力を借りて魔法を使う。 殆どの者はただ借りているだけだが、精霊召喚の儀を行い、その呼びかけに精霊が応じれば契約成立となる。 精霊と契約を交わしている者は精霊との結びつきが強く、契約を交わしていない人間よりも大きな力を使うことができる」
「そうなんだ。 知らなかった。 私は契約の儀をしたわけじゃないから、私とアルファの関係は……友達みたいな感じ?」
「そうだな。 精霊にとってメサイアは友の様な存在だな。 だがたとえメサイアだろうと、どの精霊とも仲良くなれるわけではない。 特に上位精霊ともなれば自我が強く、癖も強い。 メサイアだからと好き勝手していれば最悪の場合、上位精霊はメサイアを殺してしまう事もある」
うわー……聞かなきゃよかった。いや、聞いてよかったのか?なんか複雑。
「上位精霊と出会ったら大人しくしておくね」
「今のままのレイラであれば問題ない。 それに私がいるんだ。 怒りに任せて馬鹿なことをする精霊はいないだろう」
だといいんだけど……。
「レイラー」
「レイラー」
精霊たちに呼ばれて顔を向けると、下位精霊たちには大きすぎるバスケットを何人もの精霊たちが持ってきた。その中にはほんのりピンクがかった赤い木の実_ドルチェの実_が溢れんばかりに入っていた。
「こんなに貰ってもいいの?」
「いいよー」
「ありがとう! またジャム作るから、お菓子と一緒に食べよう」
「わーいー!」
「わーいー!」
「楽しみー!」
「やったー!」
歌のお礼にと精霊たちはドルチェの実をくれる。初めて貰った時はどう調理すればいいか分からなくて屋敷の料理長に相談しに行った。すると物凄く驚かれた。
ドルチェの実はとても甘いのに変に口の中に味が残らずとても人気のある実だけど、中々採取できない上に採取後の管理が難しく、傷んでしまう為数個でさえ高額で取引されているらしい。そんな木の実をバスケットいっぱい、それも採れたてのものを持ってきたものだから料理長の興奮は凄まじかった。
「どんなお菓子がいい?」
「クッキー」
「ケーキー」
「パイー」
「スコーンー」
「あはは! 分かったわ! 楽しみにしてて」
下位精霊たちは簡単な単語でしか会話ができない。人間で言えば2、3歳くらい。姿は手のひらサイズでとても小さい。
中位精霊は6歳前後くらい。姿も小学校低学年くらいの子供くらい。
上位精霊は知能は完璧大人で姿も大人。
下位精霊と中位精霊にはよく会うけど、上位精霊には殆ど会ったことがない。それだけ希少な存在なのだとアルファが教えてくれた。
時は忙しなく、そして賑やかに過ぎていった。日々のルーティンは大体決まってはいたものの、空いている時間はお母様か精霊たちと過ごすことが多かった。
精霊たちに歌を聴かせるのは別に精霊の森じゃなくてもいいらしく、温室にピアノを置いてもらってそこで演奏をするようになった。基本温室の中でしか精霊たちは姿を現さないから、精霊たちの存在を知っているのは両親、サラ、執事長のジェルマンだけ。精霊たちもこの4人とは仲良くしてくれる。私の大切な人たちだと分かってるのかもしれない。
そんな楽しい時間を過ごしていると驚くほど時間が経つのはあっという間で、来週には社交界デビューの日が迫っていた。デビュタントのパートナーはテオが引き受けてくれた。本当であれば恋人や婚約者、もしくは男友達にお願いするところだけど、生憎私にそんな相手はいない。お父様が付き添ってくれるものだと思っていたから、パートナーはテオにお願いしているとお父様から聞いた時には頭の中が真っ白になった。そんな私の様子を心配してか、お父様が何度かテオと会う機会を作ってくれて、今では緊張することなく話ができるまでになった。
ヴァレリー侯爵家に着くと、真っ先に出迎えてくれるのはジュリオだ。侯爵家に来ている間は精霊たちに歌を聴かせるわけにもいかず、アルファが迎えに来ては精霊の森へ連れて行ってくれる。
「これを渡しておこう」
「これ……何?」
精霊の森で精霊たちに歌を聴かせた後精霊たちと戯れていると、手のひらの中にすっぽり収まるほどの小さな小瓶を渡してきた。
「世界樹の涙だ」
受け取って中の液体を見ると、キラキラと輝いている。
「これを飲めばどんな病いも呪いも怪我も治すことができる。 手足を失ったとしても、再生される」
「え!? 万能薬ってこと!?」
「死者を蘇らせる事はできないがな。 なんにせよ、つねに持ち歩け。 いいな?」
「あ、うん……ありがとう」
「この世界樹の涙の所有者はレイラになっている。 この小瓶は普通の人間にはただの瓶にしか見えない。 精霊、精霊の契約者は目にする事ができるが、蓋を開け使うことができるのはレイラだけだ。 だが、レイラが世界樹の涙を誰かに譲渡すれば、その者が所有者となる」
簡単に言えば、今は私しか使えないけど、私があげたらその人しか使えないってことよね?
「精霊の契約者って何?」
「人間は精霊の力を借りて魔法を使う。 殆どの者はただ借りているだけだが、精霊召喚の儀を行い、その呼びかけに精霊が応じれば契約成立となる。 精霊と契約を交わしている者は精霊との結びつきが強く、契約を交わしていない人間よりも大きな力を使うことができる」
「そうなんだ。 知らなかった。 私は契約の儀をしたわけじゃないから、私とアルファの関係は……友達みたいな感じ?」
「そうだな。 精霊にとってメサイアは友の様な存在だな。 だがたとえメサイアだろうと、どの精霊とも仲良くなれるわけではない。 特に上位精霊ともなれば自我が強く、癖も強い。 メサイアだからと好き勝手していれば最悪の場合、上位精霊はメサイアを殺してしまう事もある」
うわー……聞かなきゃよかった。いや、聞いてよかったのか?なんか複雑。
「上位精霊と出会ったら大人しくしておくね」
「今のままのレイラであれば問題ない。 それに私がいるんだ。 怒りに任せて馬鹿なことをする精霊はいないだろう」
だといいんだけど……。
「レイラー」
「レイラー」
精霊たちに呼ばれて顔を向けると、下位精霊たちには大きすぎるバスケットを何人もの精霊たちが持ってきた。その中にはほんのりピンクがかった赤い木の実_ドルチェの実_が溢れんばかりに入っていた。
「こんなに貰ってもいいの?」
「いいよー」
「ありがとう! またジャム作るから、お菓子と一緒に食べよう」
「わーいー!」
「わーいー!」
「楽しみー!」
「やったー!」
歌のお礼にと精霊たちはドルチェの実をくれる。初めて貰った時はどう調理すればいいか分からなくて屋敷の料理長に相談しに行った。すると物凄く驚かれた。
ドルチェの実はとても甘いのに変に口の中に味が残らずとても人気のある実だけど、中々採取できない上に採取後の管理が難しく、傷んでしまう為数個でさえ高額で取引されているらしい。そんな木の実をバスケットいっぱい、それも採れたてのものを持ってきたものだから料理長の興奮は凄まじかった。
「どんなお菓子がいい?」
「クッキー」
「ケーキー」
「パイー」
「スコーンー」
「あはは! 分かったわ! 楽しみにしてて」
下位精霊たちは簡単な単語でしか会話ができない。人間で言えば2、3歳くらい。姿は手のひらサイズでとても小さい。
中位精霊は6歳前後くらい。姿も小学校低学年くらいの子供くらい。
上位精霊は知能は完璧大人で姿も大人。
下位精霊と中位精霊にはよく会うけど、上位精霊には殆ど会ったことがない。それだけ希少な存在なのだとアルファが教えてくれた。