精霊たちのメサイア
22.5【閑話】アレクサンダー視点
22.5【閑話】アレクサンダー視点
夕食を終えて部屋に入ると、その後ろからロレンソとルシオも入ってきた。ソファーに座り、用意されたワインに手をつけた。
「ひとまず、ビルヒリオ殿下が無事に見つかって良かった。 この国で死体で見つかったとなれば大問題になるところだったよ」
獣王国から密かに依頼を受けてビルヒリオ殿下を探していた。そして見つかったと王宮に連絡が入った。ヴァレリー家の領地にいた俺が迎えに来る事になったわけだが、正直他の部隊じゃなくて良かった。
「だな。 レイラ嬢が崖から落ちてくれて良かったな」
「口が裂けてもそう言う事はレイラには言うなよ」
そう言うとルシオは「へいへい」とやる気のない返事をしながらワインを飲んだ。
「それで? レイラ嬢は一体何者なの?」
「アルファっつーのはレイラ嬢が契約している精霊か? 上位精霊の事をあんな風に言えるっつー事は、アルファ__ぶっ、なんだよ! ミリー!!」
姿を表したルシオの中位精霊のミリーは勢いよくルシオの口を小さな両手で塞いだ。
「ダメなの! 精霊王様を呼び捨てにするのはメなの! 愛称で呼んでいいのはレイラだけなの!!」
「は!? 契約してる精霊って精霊王かよ!?」
話が間違った方向に進み始めた。
「メサイアか……そうだろう?」
流石はロレンソだな。頭の回転が速いというかキレるというか……。
「そうだ。 レイラはメサイアだ。 精霊王がとても大切にしている。 言動には気をつけろよ」
母の事を交えて一から説明し直した。レイラからメサイアだと内緒にしてほしいと頼まれた事も伝えた。ルシオは頭をクシャクシャかき、ロレンソは疲れた表情を見せる。
「レイラは精霊王の加護持ちだ。 俺ら上位精霊ですら、安易に手を出せばタダではすまん」
「すげー加護持ってんのに、普通だよな」
「普通って?」
「だってよ? 本当なら深紅のクソ聖女みたいに偉そーにできるじゃねーか。 それなのに公にしねーで普通の生活を望んでんだろ? 普通っつーか変だな」
「レイラはね、ただ普通の幸せな生活を望んでるのさ。 その普通がどれほど難しく誰もが手にできるものじゃないと理解しているからこそ、普通を望まずにはいられないのさ」
フレイムの言葉は分かるようで分からなかった。
最近社交界デビューを終え、少女から大人になる階段を一つ登ったばかりのレイラ。そんな彼女は侯爵家に引き取られ、精霊王の加護をもち、望むものは何だって手に入れられる。手に入れられるものが多いのにそれを望まないのはフレイムの言う普通を望んでいるからか?普通とは人それぞれ違うもの。考えたところでレイラはに直接聞くまではその普通を分かってはあげられないだろう。
「レイラ嬢の情報は教会で秘匿扱いになっていた。 彼女は一体何者なんだ?」
「初耳なんだが?」
「アレクには詳細がわかってから改めて報告しようと思っていたんだ」
「レイラに直接聞いてみりゃいいじゃねーか」
「それができれば苦労はしないよ」
トネールの提案にロレンソは盛大にため息を吐いた。
「そんじゃ、こそこそ嗅ぎ回んのはやめとくんだな」
「あの子の事を知るという事は、あの子の人生を共に背負うという事。 それ程の覚悟があるんなら、調べてみるといいさ」
フレイムは抱きしめるように後ろから俺の首元に腕を回した。そして耳元で小さく囁いた。「お前はどうなりたいの」と……。
言うだけ言って姿を消してしまった。精霊達のいなくなった部屋はまた静かな空間に戻った。
夕食を終えて部屋に入ると、その後ろからロレンソとルシオも入ってきた。ソファーに座り、用意されたワインに手をつけた。
「ひとまず、ビルヒリオ殿下が無事に見つかって良かった。 この国で死体で見つかったとなれば大問題になるところだったよ」
獣王国から密かに依頼を受けてビルヒリオ殿下を探していた。そして見つかったと王宮に連絡が入った。ヴァレリー家の領地にいた俺が迎えに来る事になったわけだが、正直他の部隊じゃなくて良かった。
「だな。 レイラ嬢が崖から落ちてくれて良かったな」
「口が裂けてもそう言う事はレイラには言うなよ」
そう言うとルシオは「へいへい」とやる気のない返事をしながらワインを飲んだ。
「それで? レイラ嬢は一体何者なの?」
「アルファっつーのはレイラ嬢が契約している精霊か? 上位精霊の事をあんな風に言えるっつー事は、アルファ__ぶっ、なんだよ! ミリー!!」
姿を表したルシオの中位精霊のミリーは勢いよくルシオの口を小さな両手で塞いだ。
「ダメなの! 精霊王様を呼び捨てにするのはメなの! 愛称で呼んでいいのはレイラだけなの!!」
「は!? 契約してる精霊って精霊王かよ!?」
話が間違った方向に進み始めた。
「メサイアか……そうだろう?」
流石はロレンソだな。頭の回転が速いというかキレるというか……。
「そうだ。 レイラはメサイアだ。 精霊王がとても大切にしている。 言動には気をつけろよ」
母の事を交えて一から説明し直した。レイラからメサイアだと内緒にしてほしいと頼まれた事も伝えた。ルシオは頭をクシャクシャかき、ロレンソは疲れた表情を見せる。
「レイラは精霊王の加護持ちだ。 俺ら上位精霊ですら、安易に手を出せばタダではすまん」
「すげー加護持ってんのに、普通だよな」
「普通って?」
「だってよ? 本当なら深紅のクソ聖女みたいに偉そーにできるじゃねーか。 それなのに公にしねーで普通の生活を望んでんだろ? 普通っつーか変だな」
「レイラはね、ただ普通の幸せな生活を望んでるのさ。 その普通がどれほど難しく誰もが手にできるものじゃないと理解しているからこそ、普通を望まずにはいられないのさ」
フレイムの言葉は分かるようで分からなかった。
最近社交界デビューを終え、少女から大人になる階段を一つ登ったばかりのレイラ。そんな彼女は侯爵家に引き取られ、精霊王の加護をもち、望むものは何だって手に入れられる。手に入れられるものが多いのにそれを望まないのはフレイムの言う普通を望んでいるからか?普通とは人それぞれ違うもの。考えたところでレイラはに直接聞くまではその普通を分かってはあげられないだろう。
「レイラ嬢の情報は教会で秘匿扱いになっていた。 彼女は一体何者なんだ?」
「初耳なんだが?」
「アレクには詳細がわかってから改めて報告しようと思っていたんだ」
「レイラに直接聞いてみりゃいいじゃねーか」
「それができれば苦労はしないよ」
トネールの提案にロレンソは盛大にため息を吐いた。
「そんじゃ、こそこそ嗅ぎ回んのはやめとくんだな」
「あの子の事を知るという事は、あの子の人生を共に背負うという事。 それ程の覚悟があるんなら、調べてみるといいさ」
フレイムは抱きしめるように後ろから俺の首元に腕を回した。そして耳元で小さく囁いた。「お前はどうなりたいの」と……。
言うだけ言って姿を消してしまった。精霊達のいなくなった部屋はまた静かな空間に戻った。