精霊たちのメサイア
42.5【閑話】家族会議
42.5【閑話】家族会議
レイラが部屋から出ていくと、部屋には殺気が溢れた。家族の中で一番温厚なクラリスでさえ、怒りを抑えきれない。
「久しぶりにはらわたが煮えくりかえりそうだ」
アロイスの言葉に全員が同じ思いだった。
「その父親のせいでレイラをこの世界へ連れてくるタイミングがずれてしまった」
突然の声に全員が反応した。精霊達はみな身を低くして頭を下げている。その反応に誰しもが確信した。この精霊こそが精霊王なのだと。
「貴方は温室でレイラとお話ししていた方ですよね? 精霊王様と存じます」
ローランの言葉に「そうだ」と答えるアルファリード。
「レイラは特別な子だ。 レイラが別の世界へ飛ばされたことにより、この世界は少しずつ歪み始めた」
「歪みとはどう言うことでしょうか」
「本当であればレイラはサミュエルと結ばれ、サミュエルは側室を持たずにレイラとの間にだけ子をなすはずだった。 だがそれが叶わず本来生まれるはずのなかった者が生まれ、神々の望んだ未来とは異なるものとなってしまった。 あの子は世界の歪みを正す為、これから様々な選択と決断を強いられるだろう」
「私たちにレイラの力になってやれるだけの力はあるのでしょうか」
アロイスの言葉にアルファリードは真剣な表情を崩さず、口を開いた。
「あの子の側に……そして愛情を注いでやってくれ。 あの子は心のどこかで愛情を恐れている」
「愛情に恐れを抱いているのは、元の世界での家族との関係が原因なのですか? 本当に元の世界でレイラは少しも家族から愛情を注がれなかったのですか?」
クラリスの声は震え、今にも泣き出してしまいそうだった。
「レイラは家族に縁がなかった。 あの子を愛した祖母は確かにレイラに愛情を注いだ。 だがレイラは唯一の心の拠り所であった祖母を失い、本人も気付かぬ内に愛情に恐れを持ってしまった。 だから愛とはなんなのか、それを教えてあげてほしい」
クラリスは涙を流しながら「勿論です」と答えた。そんなクラリスの肩を抱き寄り添うローラン。
「絆の事だがな、絆は切った後他の者と絆を結び直すこともできるそうだ。 サミュエルに望む者がいるのなら、考えておく様に伝えてくれ。 レイラには私から話しておこう」
そう言うとアルファリードは姿を消した。その瞬間部屋に漂っていた緊張感が一気に解けた。
「もしもレイラが誰かと絆を結びたいと望めば、その通りにするつもりですか?」
エタンがそう口にすると、ローランは顎に手をやり考え込んだ。暫しの沈黙の後、口を開く。
「できる限りレイラの望みは叶えてやりたい。 だがもし望む相手がいないのなら、結婚相手にセオドアはどうかと考えている。 ロドルフォとフレドリックには既に話はしている」
「レイラがカストロ辺境伯領へ行ってしまうのは寂しいが、結婚相手としてセオドアなら申し分ない」
「僕もアロイス兄様と同じ気持ちかな。 辺境伯領は魔物や他国からの侵略の防衛を担っているから危険な場所だけど、レイラには精霊王様がついているし、ベアトリス様の加護がある。 王都にいる欲にまみれた人間に囲まれているより安全だと思う」
「そうですね。 私もそう思います。 とりあえず国王陛下へのご報告にはアロイス兄様が行きますよね?」
「あぁ、そうだな」
「私も同行します。 絆の件は魔導士団上層部も関わっていた方がいいでしょうから」
魔導士団で副師団長を務めるエタンの真面目な表情にアロイスはしっかりと頷いて見せた。
レイラが部屋から出ていくと、部屋には殺気が溢れた。家族の中で一番温厚なクラリスでさえ、怒りを抑えきれない。
「久しぶりにはらわたが煮えくりかえりそうだ」
アロイスの言葉に全員が同じ思いだった。
「その父親のせいでレイラをこの世界へ連れてくるタイミングがずれてしまった」
突然の声に全員が反応した。精霊達はみな身を低くして頭を下げている。その反応に誰しもが確信した。この精霊こそが精霊王なのだと。
「貴方は温室でレイラとお話ししていた方ですよね? 精霊王様と存じます」
ローランの言葉に「そうだ」と答えるアルファリード。
「レイラは特別な子だ。 レイラが別の世界へ飛ばされたことにより、この世界は少しずつ歪み始めた」
「歪みとはどう言うことでしょうか」
「本当であればレイラはサミュエルと結ばれ、サミュエルは側室を持たずにレイラとの間にだけ子をなすはずだった。 だがそれが叶わず本来生まれるはずのなかった者が生まれ、神々の望んだ未来とは異なるものとなってしまった。 あの子は世界の歪みを正す為、これから様々な選択と決断を強いられるだろう」
「私たちにレイラの力になってやれるだけの力はあるのでしょうか」
アロイスの言葉にアルファリードは真剣な表情を崩さず、口を開いた。
「あの子の側に……そして愛情を注いでやってくれ。 あの子は心のどこかで愛情を恐れている」
「愛情に恐れを抱いているのは、元の世界での家族との関係が原因なのですか? 本当に元の世界でレイラは少しも家族から愛情を注がれなかったのですか?」
クラリスの声は震え、今にも泣き出してしまいそうだった。
「レイラは家族に縁がなかった。 あの子を愛した祖母は確かにレイラに愛情を注いだ。 だがレイラは唯一の心の拠り所であった祖母を失い、本人も気付かぬ内に愛情に恐れを持ってしまった。 だから愛とはなんなのか、それを教えてあげてほしい」
クラリスは涙を流しながら「勿論です」と答えた。そんなクラリスの肩を抱き寄り添うローラン。
「絆の事だがな、絆は切った後他の者と絆を結び直すこともできるそうだ。 サミュエルに望む者がいるのなら、考えておく様に伝えてくれ。 レイラには私から話しておこう」
そう言うとアルファリードは姿を消した。その瞬間部屋に漂っていた緊張感が一気に解けた。
「もしもレイラが誰かと絆を結びたいと望めば、その通りにするつもりですか?」
エタンがそう口にすると、ローランは顎に手をやり考え込んだ。暫しの沈黙の後、口を開く。
「できる限りレイラの望みは叶えてやりたい。 だがもし望む相手がいないのなら、結婚相手にセオドアはどうかと考えている。 ロドルフォとフレドリックには既に話はしている」
「レイラがカストロ辺境伯領へ行ってしまうのは寂しいが、結婚相手としてセオドアなら申し分ない」
「僕もアロイス兄様と同じ気持ちかな。 辺境伯領は魔物や他国からの侵略の防衛を担っているから危険な場所だけど、レイラには精霊王様がついているし、ベアトリス様の加護がある。 王都にいる欲にまみれた人間に囲まれているより安全だと思う」
「そうですね。 私もそう思います。 とりあえず国王陛下へのご報告にはアロイス兄様が行きますよね?」
「あぁ、そうだな」
「私も同行します。 絆の件は魔導士団上層部も関わっていた方がいいでしょうから」
魔導士団で副師団長を務めるエタンの真面目な表情にアロイスはしっかりと頷いて見せた。