精霊たちのメサイア
44.王宮の精霊たち
44.王宮の精霊たち
国王陛下にお願いして、私が使用させてもらう温室を見せてもらう事にした。アロイス兄様は用事を済ませてくると行って他の所へ行ってしまった。
チラッと斜め前に視線を向けると、王宮第一騎士団の団長であるクラム様と目が合いニコッと微笑まれた。咄嗟に笑い返す。ヴァレリー侯爵家からもいつも2名護衛として騎士がついていてくれるけど、王宮にいる間は王宮の護衛もつける必要があると言って、団長であるクラム様と同じく第一騎士団のドラン様が付き添ってくれている。有り難いというよりも、申し訳ないの一言に尽きる。
「こちらが今後レイラ様にお使いいただく温室です。 出入り口にも警備の者が立ちますので、ご安心ください」
「何から何までありがとうございます」
「いいえ、とんでもないです。 レイラ様が少しでも快適にお過ごしになれるようお力になれれば嬉しい限りです」
騎士団長と聞いて最初は少し怖く感じたけど、優しそうな人で安心した。
「中を見て回ってもいいですか?」
「はい、勿論です」
「ありがとうございます。 サラとリタもよかったら自由に見て回ってね」
「ありがとうございます。 ですが私たちもレイラお嬢様と一緒に見て回りたいですわ」
「ふふっ、それならみんなでお散歩しましょう!」
サラとリタと3人で温室の中をゆっくり見て回った。その後ろには逞しい騎士が4人。日本での生活からは想像もできない光景に笑ってしまいそうだった。
ガラス張りになっている温室には贅沢な程太陽の光が注ぎ込まれている。そして魔法がかけられているお陰で快適に過ごせる温度。この空間にピアノとゆったり過ごせる様テーブルと椅子を置いてくださると言っていた。他に欲しいものや植えたい花など有れば言ってほしいとも。
「れーら、うたわない?」
抱っこしているラウに上目遣いでお願いされ、ちょっと考えて口を開いた。
孤独なお姫様が歌を唄う時だけは自分の心を解放させることができる…そんな物語りでお姫様が歌っている曲を歌った。日本にいたときには母にそんなくだらない歌を歌わないで!と怒られてからは口ずさむ事もできなかった。でも今なら誰に遠慮する事もない。好きな歌を好きなだけ歌える。
温室は精霊たちで溢れかえっていた。光を放ち、笑いながら空を舞う。歌に合わせて手を伸ばすと、手のひらにちょこちょこと座る精霊たち。重さなんて感じない。風船の様にふわふわとした感じ。手のひらだけじゃない。頭や肩、腕、いろんなところにちょこんと座られて、歌いながら笑顔が漏れる。
歌のクライマックス。一番盛り上がる場所で精霊たちが大きく光を放った。眩しくて目を開けられないくらいに。
「あはははははは!!!」
ビックリしすぎて歌い終わって笑ってしまった。サラとリタ、騎士のみんなも驚いている。
「レイラ! 今のはなんですの!? そんなことより素敵な歌声でしたわ!!」
突然ガバッと抱きしめられた。
「ジュ、ジュリア様!?」
体を離すとジュリア様は空色の瞳をやんわり細めた。そのすぐ後ろにいるテオはそんなジュリア様を見守る様に見つめ、なんだか胸の奥がじんわり温かくなった。
「レイラ!? どうなさったの!?」
慌てふためきながらハンカチを頬に当ててくれるジュリア様。
「いえ、ただ、本当に良かったなと……ジュリア様にこうしてまたお会いできて、本当に嬉しく思います」
ジュリア様に包み込む様に両手をギュッと握られた。
「レイラ……本当にありがとう。 貴女がいなければテオとは一緒に居られなかったわ。 普通の生活だって送れなかった。 何度お礼を言っても足りないのだけれど、本当に…本当にありがとう」
トゥーサン殿下、パトリック様、ジュール様にも頭を下げられて慌ててやめさせた。特に王族であるトゥーサン殿下に頭を下げさせるなんて、胃に悪い。
「ねぇ、レイラ。 飲んでしまった後にこんな事聞くのもどうかと思うのだけれど……精霊王に怒られはしなかった?」
「え?」
「あれは精霊王に頂いた物だったのでしょう?」
不安そうな顔をしているのはジュリア様だけじゃなかった。みんな気にしてくれていた様だ。
「私がそうしたかったのだと話しをしたら、精霊王はただ『そうか』と言っていました。 ですから本当にお気になさらないでください」
「でも……」
「もしも世界樹の涙を飲んだ事に責任を感じていらっしゃるのでしたら、今度精霊たちにお菓子を振る舞ってあげて下さいませんか? 精霊たちはお菓子や紅茶が大好きなんです」
私の言葉に反応した精霊たちは口々に「おかしー」「けーきー」「クッキー」と楽しそうに呟き始めた。
「賑やかだね。 レイラ嬢に改めてご挨拶をと思ったんだけど、また出直すよ」
「ニコラース殿下!」
あぁ!せっかくお話しするチャンスなのに!でもこんなに人がいたらお話しできないわよね!?
あ!
「ニコラース殿下、もし宜しければまたお近いうちに機会をいただければ幸いです」
「あぁ、そうだね。 それならまた改めて日程を決めさせてもらうよ」
「あら! ニコお兄様もう行ってしまうの?」
ニコラース殿下と改めてお話しできる機会ができたとホッとしたのも束の間、ジュリア様が引き留めてしまった。今話しちゃったら改めて会う必要性がなくなるのでは!?
「リタ!?」
サラの慌てた声に振り返ると、リタが倒れていた。急いで駆け寄ってリタの名前を呼ぶけど返事がない。
国王陛下にお願いして、私が使用させてもらう温室を見せてもらう事にした。アロイス兄様は用事を済ませてくると行って他の所へ行ってしまった。
チラッと斜め前に視線を向けると、王宮第一騎士団の団長であるクラム様と目が合いニコッと微笑まれた。咄嗟に笑い返す。ヴァレリー侯爵家からもいつも2名護衛として騎士がついていてくれるけど、王宮にいる間は王宮の護衛もつける必要があると言って、団長であるクラム様と同じく第一騎士団のドラン様が付き添ってくれている。有り難いというよりも、申し訳ないの一言に尽きる。
「こちらが今後レイラ様にお使いいただく温室です。 出入り口にも警備の者が立ちますので、ご安心ください」
「何から何までありがとうございます」
「いいえ、とんでもないです。 レイラ様が少しでも快適にお過ごしになれるようお力になれれば嬉しい限りです」
騎士団長と聞いて最初は少し怖く感じたけど、優しそうな人で安心した。
「中を見て回ってもいいですか?」
「はい、勿論です」
「ありがとうございます。 サラとリタもよかったら自由に見て回ってね」
「ありがとうございます。 ですが私たちもレイラお嬢様と一緒に見て回りたいですわ」
「ふふっ、それならみんなでお散歩しましょう!」
サラとリタと3人で温室の中をゆっくり見て回った。その後ろには逞しい騎士が4人。日本での生活からは想像もできない光景に笑ってしまいそうだった。
ガラス張りになっている温室には贅沢な程太陽の光が注ぎ込まれている。そして魔法がかけられているお陰で快適に過ごせる温度。この空間にピアノとゆったり過ごせる様テーブルと椅子を置いてくださると言っていた。他に欲しいものや植えたい花など有れば言ってほしいとも。
「れーら、うたわない?」
抱っこしているラウに上目遣いでお願いされ、ちょっと考えて口を開いた。
孤独なお姫様が歌を唄う時だけは自分の心を解放させることができる…そんな物語りでお姫様が歌っている曲を歌った。日本にいたときには母にそんなくだらない歌を歌わないで!と怒られてからは口ずさむ事もできなかった。でも今なら誰に遠慮する事もない。好きな歌を好きなだけ歌える。
温室は精霊たちで溢れかえっていた。光を放ち、笑いながら空を舞う。歌に合わせて手を伸ばすと、手のひらにちょこちょこと座る精霊たち。重さなんて感じない。風船の様にふわふわとした感じ。手のひらだけじゃない。頭や肩、腕、いろんなところにちょこんと座られて、歌いながら笑顔が漏れる。
歌のクライマックス。一番盛り上がる場所で精霊たちが大きく光を放った。眩しくて目を開けられないくらいに。
「あはははははは!!!」
ビックリしすぎて歌い終わって笑ってしまった。サラとリタ、騎士のみんなも驚いている。
「レイラ! 今のはなんですの!? そんなことより素敵な歌声でしたわ!!」
突然ガバッと抱きしめられた。
「ジュ、ジュリア様!?」
体を離すとジュリア様は空色の瞳をやんわり細めた。そのすぐ後ろにいるテオはそんなジュリア様を見守る様に見つめ、なんだか胸の奥がじんわり温かくなった。
「レイラ!? どうなさったの!?」
慌てふためきながらハンカチを頬に当ててくれるジュリア様。
「いえ、ただ、本当に良かったなと……ジュリア様にこうしてまたお会いできて、本当に嬉しく思います」
ジュリア様に包み込む様に両手をギュッと握られた。
「レイラ……本当にありがとう。 貴女がいなければテオとは一緒に居られなかったわ。 普通の生活だって送れなかった。 何度お礼を言っても足りないのだけれど、本当に…本当にありがとう」
トゥーサン殿下、パトリック様、ジュール様にも頭を下げられて慌ててやめさせた。特に王族であるトゥーサン殿下に頭を下げさせるなんて、胃に悪い。
「ねぇ、レイラ。 飲んでしまった後にこんな事聞くのもどうかと思うのだけれど……精霊王に怒られはしなかった?」
「え?」
「あれは精霊王に頂いた物だったのでしょう?」
不安そうな顔をしているのはジュリア様だけじゃなかった。みんな気にしてくれていた様だ。
「私がそうしたかったのだと話しをしたら、精霊王はただ『そうか』と言っていました。 ですから本当にお気になさらないでください」
「でも……」
「もしも世界樹の涙を飲んだ事に責任を感じていらっしゃるのでしたら、今度精霊たちにお菓子を振る舞ってあげて下さいませんか? 精霊たちはお菓子や紅茶が大好きなんです」
私の言葉に反応した精霊たちは口々に「おかしー」「けーきー」「クッキー」と楽しそうに呟き始めた。
「賑やかだね。 レイラ嬢に改めてご挨拶をと思ったんだけど、また出直すよ」
「ニコラース殿下!」
あぁ!せっかくお話しするチャンスなのに!でもこんなに人がいたらお話しできないわよね!?
あ!
「ニコラース殿下、もし宜しければまたお近いうちに機会をいただければ幸いです」
「あぁ、そうだね。 それならまた改めて日程を決めさせてもらうよ」
「あら! ニコお兄様もう行ってしまうの?」
ニコラース殿下と改めてお話しできる機会ができたとホッとしたのも束の間、ジュリア様が引き留めてしまった。今話しちゃったら改めて会う必要性がなくなるのでは!?
「リタ!?」
サラの慌てた声に振り返ると、リタが倒れていた。急いで駆け寄ってリタの名前を呼ぶけど返事がない。