ロミオの嘘とジュリエットの涙
「っ……ん」

 声を抑えようにもキスの合間に勝手に漏れてしまう。両親が寝静まった深夜、私はこっそり透の部屋に来ていた。

 私からキスをしても結局は透のペースになってしまう。年の差か、経験の差か。甘く激しく口内を蹂躙(じゅうりん)され、私はあっさり堕ちていく。

「結、可愛い」

 唇が離れ、さらりと耳元で囁かれた言葉に全身が震える。そのまま音を立て耳たぶに口づけられ、私はぎゅっと体を縮めた。

「……意地悪」

 透に抱きつき、せめてもの抵抗にと呟く。心臓が破裂しそうに痛い。一階で寝ている両親のことを思うと余計に。

 同じ職場で知り合って結婚したと聞いたが、両親は今でも仲がいい。明るく朗らかで世話焼きな母と、無口で物静かだけれどいつも私や透の意思を尊重してくれる父。

 リビングには赤ちゃんの私と幼い透、両親の四人で写っている写真を飾っている。それが一番古いかな。他にも節目で撮影した四人揃った家族写真がたくさんあった。

 どこにでもある幸せな家族そのもの。そして両親にとって私たちは、喧嘩しても仲の良いごく普通の兄妹だ。

 こんな関係になっているなんて夢にも思っていない。最悪の裏切りだ。

「結……好きだよ」

「私も……。好き、透が大好き」

 ごめんなさい。世界一親不孝な子どもで。でもこの想いは止められないの。
< 5 / 17 >

この作品をシェア

pagetop