君と見たい世界
「あの…」
教室に入り
窓の外を見ている後ろ姿に声をかけた
振り向いた彼は
私を見て少し微笑んだ
「えっと、私に何か用ですか?」
顔も名前も知らない
話したことも見かけたことも無い
「俺、秋月柊(あきづき しゅう)。2年5組。君は?」
名前を聞いてもピンとこなかった
「松下流花(まつした るか)です。2年2組です」
私の名前聞くってことは
彼も私の事知らなかったってこと?
「そっか。じゃあ松下流花さん、俺の思い出作りに付き合ってくれない?」
「思い出作り?」
「うん、思い出作り」
何を言ってるんだろう
思い出作りって何?
なんで私に頼むの?
「あっ、今日なんか予定ある?」
「ないですけど…」
「じゃあ早速付き合ってよ!」
そう言うと秋月くんは
返事も聞かずに
私の腕を掴んで歩き出した