王子のパンツを盗んで国外逃亡させていただきます!
そして現在。
大きな姿見には腰まであるプラチナブロンドを優美に結い上げ、91・58・89のナイスバディで菫色のドレスを着こなした18歳の私が映っている。
キメの細かい白い肌。何も塗らなくてもそのままで紅い唇。長い金色の睫毛に縁取られたアイスブルーの瞳。
我ながらなんて美少女なんだろう。
あの日から8年間。
王妃になるための勉強に加えてバストアップ体操に美顔マッサージに髪のお手入れ。栄養バランスを考えた食事メニューや半身浴。刺繍。ダンス。ピアノ。カラーコーディネートの資格取得。マジック。速読。養蜂。苔の育成。
毎日自分磨きに励んできた。
その努力の結果が今の私の姿だ。
「……まぁこんな美少女に迫られてもカインは『兄』のままなんですけどね」
虚ろに呟きながら過去の『カインをドキドキさせて妹以上の女性として意識させて婚約解消イベントを回避しよう大作戦』を年齢順に思い返す。
【12歳】
女性らしい曲線を描き始めた胸を大胆に露出したデザインのドレスでカイン(18)に会いに行った。
結果は惨敗。
「リジィ、今日は寒いからこれを羽織ると良いよ」
優しくショールをかけられただけで終了。
【15歳】
転んだふりをしてカイン(21)に抱きつきEカップに成長した胸を思い切り押し付けた。
結果は惨敗。
カイン(21)は特に動揺することもなく「これ以上転ばないように手を繋ごうか」なんてエスコートしてくれた。
【17歳】
カイン(23)が自分にときめいている手応えが無さすぎて、思い余って彼のベッドに忍び込む。
結果は惨敗。
私に向かって手を伸ばしたカイン(23)に期待と緊張で一瞬身を固くしたけれど、ただ抱き締められて子供のように寝かしつけられた。
当然朝まで同じベッドで過ごしても二人の関係は清いまま。
「……なんなの。カインなんなの。こんな超級美少女が物理の力で誘惑してるのに手を出してこないとかカインなんなの。やっぱり攻略制限がかかってる王子はそう簡単に攻略できないのこれがライバルキャラの限界なの」
カインがヒロインと出会って恋に落ち、私との婚約を破棄することは最早変えられない運命なのか。
今日は遂にあの王宮主催のダンスパーティーの日だ。
「逃げ出したい……」
このままヒーローとヒロイン出会いイベントを見せられるくらいなら。
公爵令嬢という立場も第一王子の婚約者という役目も忘れて逃げ出してしまいたい。
「まだよ……まだよブリジット。今日本当にヒロインが王宮に来ると、決まったわけじゃないわ。まだ、諦めないで……」
鏡の自分に向かって励ますように話しかける。
あぁだけど。
出会ってしまった。出会ってしまった!
遂に二人は、出会ってしまった。
大きな姿見には腰まであるプラチナブロンドを優美に結い上げ、91・58・89のナイスバディで菫色のドレスを着こなした18歳の私が映っている。
キメの細かい白い肌。何も塗らなくてもそのままで紅い唇。長い金色の睫毛に縁取られたアイスブルーの瞳。
我ながらなんて美少女なんだろう。
あの日から8年間。
王妃になるための勉強に加えてバストアップ体操に美顔マッサージに髪のお手入れ。栄養バランスを考えた食事メニューや半身浴。刺繍。ダンス。ピアノ。カラーコーディネートの資格取得。マジック。速読。養蜂。苔の育成。
毎日自分磨きに励んできた。
その努力の結果が今の私の姿だ。
「……まぁこんな美少女に迫られてもカインは『兄』のままなんですけどね」
虚ろに呟きながら過去の『カインをドキドキさせて妹以上の女性として意識させて婚約解消イベントを回避しよう大作戦』を年齢順に思い返す。
【12歳】
女性らしい曲線を描き始めた胸を大胆に露出したデザインのドレスでカイン(18)に会いに行った。
結果は惨敗。
「リジィ、今日は寒いからこれを羽織ると良いよ」
優しくショールをかけられただけで終了。
【15歳】
転んだふりをしてカイン(21)に抱きつきEカップに成長した胸を思い切り押し付けた。
結果は惨敗。
カイン(21)は特に動揺することもなく「これ以上転ばないように手を繋ごうか」なんてエスコートしてくれた。
【17歳】
カイン(23)が自分にときめいている手応えが無さすぎて、思い余って彼のベッドに忍び込む。
結果は惨敗。
私に向かって手を伸ばしたカイン(23)に期待と緊張で一瞬身を固くしたけれど、ただ抱き締められて子供のように寝かしつけられた。
当然朝まで同じベッドで過ごしても二人の関係は清いまま。
「……なんなの。カインなんなの。こんな超級美少女が物理の力で誘惑してるのに手を出してこないとかカインなんなの。やっぱり攻略制限がかかってる王子はそう簡単に攻略できないのこれがライバルキャラの限界なの」
カインがヒロインと出会って恋に落ち、私との婚約を破棄することは最早変えられない運命なのか。
今日は遂にあの王宮主催のダンスパーティーの日だ。
「逃げ出したい……」
このままヒーローとヒロイン出会いイベントを見せられるくらいなら。
公爵令嬢という立場も第一王子の婚約者という役目も忘れて逃げ出してしまいたい。
「まだよ……まだよブリジット。今日本当にヒロインが王宮に来ると、決まったわけじゃないわ。まだ、諦めないで……」
鏡の自分に向かって励ますように話しかける。
あぁだけど。
出会ってしまった。出会ってしまった!
遂に二人は、出会ってしまった。