ここはきっと彼の手の内。
元カレ。
私はと誰もいない部屋で目を覚ました。リビングには伊織くんの字で"大学に行ってきます。"と書かれたメモが置かれていた。私は下着を変え、洗濯機を回した。クローゼットの中を見ておどろいた。
「え…?」
目の前には空っぽのハンガー。そこに衣服はなかった。なんで?泥棒?
私は急いでタンスを開く。
「…どういうこと…??」
衣服が一着もない。あるのは下着と昨日の夜脱ぎ捨てられたパジャマ一着。どういうこと…??
とりあえず昨日のパジャマを着る。だけど、これじゃ外にもいけないな…。
ズボンの丈が短いうえに上はキャミソール同然。もしやと思い玄関に出る。
「…やっぱり…。」
案の定そこに靴はなかった。1足も。伊織くんの靴もなかった。伊織くんの服もない。
でも、伊織くんの私物は家にあるから出ていったわけじゃなさそうだ…。なんで、なんで、衣服からくつまで…。
その時だった。チャイムがなった。
私は伊織くんかと思い、勢い良くドアを開けた。わかると思うけどこういうときって大体伊織くんじゃない。
「…よ。」
「……まさと、くん、、、?」
私は急いでドアを閉める。
「あ、ちょっと。」
この格好じゃ流石に会えない。し、雅人くん…はなんでこの家を…。
「お願い、開けて?大学のやつにさ、聞いたんだ。お前が倒れたって…。それから、大学来てないって…。」
ドア越しに聞こえる雅人くんの声。
「だ、誰に聞いたの…。」
「いおりから聞いたよ。」
私はその名前を聞いて再び勢い良くドアを開けた。
「うぉ。驚かすなよ。」
「伊織くんから聞いたの?」
「そうだよ。あ、これ。お見舞。プリンとミルクティー。」
"ミルクティー"。
「…わざわざありがとう…。」
「それでさ、やっぱり一度話をさせて。」
「…なんの、話…?」
今更何、そう言いたかった。彼との破局の原因は彼の浮気。彼は言い訳を今更言うつもりなのか…?
「伊織の許可も貰ってる。家に入れて。」
私は下を向いた。
「あ、いや、そうだよな。嫌だよな…。じゃあカフェかどっかに、あ、でも体調悪いんだっけ…。」
「ねぇ、雅人くん。雅人くんはなんで浮気したの?」
「‥え?」
聞く前に私達は別れた。理由も聞かずに彼から離れた私は彼が浮気した理由を知らない。
「それ、聞きたいの…?」
「…うん。」
「それは、ハナの意志?」
「そうだよ。だから、はい。うちに上がって。」
「…でも、」
「伊織くんの許可得てるんだよね?」
「まぁ。」
「何かしたらすぐ警察呼ぶよ?」
「いいよ。何もしない。誓うよ。」