心理作戦といこうか。
エレベーターから見える夜景に目を向け、こちらを全く見ない真琴に痺れを切らす。

「真琴?
 道に迷った?」

「え?」

聞こえていなかったのか、夜景に夢中で聞いていなかったのか。肩をビクッとさせて聞き返してくる。

「地下鉄の駅から此処までだよ?
 道に迷った?」

「ううん。
 アプリを見ながら来たし…駅から凄く近いから迷ってはないよ。
 なんで?」 

逆に何で遅くなったのか聞きたいのだが。

「俺の予想した時間より遅かったから。」

道に迷ったのかと思ったが違ったらしい。
真琴からしたら、此処へ来たら何されるか不安だっただろうが俺は早く会いたくて仕方がなかった。

「女性は着替えながら少しお喋りしちゃう生き物なの。」

(なるほど。そういう事なら許すか。)
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