心理作戦といこうか。
それにしても一つ気になる事がある。
恥ずかしくて聞けなかったが話が盛り上がってる今がグッドタイミングだろう。

「ねえ?玲君、
 あ、のさっ気になる事があるんだけどね… あの時って使って、ないの?」

「ん?
 あの時?
 使ってないって何を?」

見事に質問を質問で返された。
恥ずかしいからやんわり遠回しに聞いたのに。
彼の表情から私が聞きたい事は分かってるはずなのに意地悪だ。

「ほら!だからっあの時だよっ!
 使わなかったのかなあって思って。
 だから…赤ちゃんがきたのかなあって。」

「真琴、質問に一つも答えられてないが何となく聞きたい事は分かった。
 もしかして妊娠の事か?」

「うん。
 だって、ほら、ね?」

「まさか、俺とした事を忘れてないよな?」

玲君こそ、突拍子もない事を思い付く天才だよって言いそうになったのを飲み込んだ。

「やだな。覚えてるに決まってるでしょ。
 自覚症状ないからびっくりしたの。」

「自覚症状は真琴が気付かなかっただけであったと思うぞ。
 例えば、ご飯の炊けた匂いが変だって言ってただろ?
 それは立派な悪阻症状の一つだ。
 一応使った。一応な。」

そんな些細な出来事にも目を向けてくれていたのかと思うとウルっとくる。
もしかしたら涙もろくなったのも妊娠の悪阻症状の一つなのだろうか。
始まったばかりで勉強不足だけど彼となら乗り越えられるだろう。
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