心理作戦といこうか。
side真琴

子どもの頃、夏休みを利用し玲君一家と一緒にキャンプに行った時の事を思い出す。
事前に申し込みをしていた工作教室で作成した思い出の一つを手に取る。
ボンドで付けた飾りがいくつか取れてしまったり、だいぶ年季は経ってしまったが捨てずに使い続けていた写真立てにその時の写真をそのまま填めてある。

木の廃材を組み合わせビーズや貝殻であしらった写真立てを作ったのは私が4歳、玲君が10歳の時だ。

「初めてのキャンプ覚えてる?
 パパたちがなかなか火起こしが出来なくて見かねた玲君が一発で付けたときはパパもおじさんも大笑いしたよね。
 そこからパパはキャンプに目覚めちゃって事あるどこにバーベキューだ何だって付き合う方は大変だった。」

「ああ。真琴は一人でトイレに行くのが怖くて付き合ったのも俺だな。」

「だ、だってテントから少し遠いから。
 ママとパパはぐっすり寝ちゃって外は暗いし寒いし心細かったの!」

「そうだったな。
 こういう思い出をたくさん作ろう。
 俺たちが親にやって貰って嬉しかった事、楽しかった事、もちろん怖かった事も。
 沢山経験を積めば大人なった時にみえてくる景色は違う。」

両家族7人が収まっている一枚。
キャンプセンターのスタッフの方に悪戦苦闘しながら張ったテント前で撮ってもらった集合写真。
皆、笑顔で皆、今よりうんと若い。
自由奔放な千草もそろそろ年貢を納めるらしい。
いつでもメンバーが増えるのは大歓迎だ。


リビングの収納棚の上の一番左に写真立てを置く。
< 160 / 167 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop