心理作戦といこうか。
18歳の誕生日に母から貰った写真立てを手に取る。
クリーム色の木製に周りはそれを取り囲む様にマーガレットを基調としたビーズの飾り付けが散りばめられている。

「本当は…玲君の卒業式の写真が良かったけど…」

「ああ。そういえばインフルエンザにかかったんだよな。
 ああいう式典って苦手だからラッキーだと思ってたんだから真琴は気にするな。
 俺としてはこの写真の方が良い。
 この写真立てには真琴の高校の卒業式の写真が合う。
 むしろこの一枚の為の物だ。」

「この時は6歳っていう年の差を物凄く感じてたなあ。
 玲君が大人に感じたもん。」

「社会人になった年か。
 おじさんになったとでも思った?」

「ふふふ。
 そんな訳ないでしょ。
 単純に子どものままの自分が嫌だったの。」

高校生の私の隣には仕事が忙しいはずの彼が駆け付けてくれて、校舎の前で撮った一枚。
白を基調としたセーラー服に身を包む私と紺色のスーツに身を包む彼。
10代と20代。
未成年と成人。
子どもから一緒に居たから気付かなかった見えない距離に気付いた年。
少し寂しげに写る私の表情にはその時の気持ちを忘れないかの様に刻まれている。


玲君の成人式の写真の隣に置く。
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