心理作戦といこうか。
ブラウンの木製の写真立てを手に取る。
何も装飾をされていないシンプルなデザイン。

成人式は青色の振り袖を選んだ。
白色の花が好きでとても映えると思ったから。
シンプルと言えばシンプルだから大きな菊の花が上品に見えたから。


「前日に雪が降って地面がぐちゃぐちゃでブーツにしたんだよね。」

「真琴はブルーとかグリーンが良く似合う。
 真琴らしい振り袖で見た瞬間、真琴にもっていかれたよ。
 本当に綺麗だ。」

「それにしても玲君は毎回突然だよね。
 前日に連絡してくれたら良いのにって何度思ったか。」

「それは悪かった。
 仕事を理由に真琴との約束を断りたくなかったんだ。」

「うん。ありがとう。
 もう…泣いちゃうから…」

大人になった私と大人になった玲君。
見た目も年齢も変わっていくのに彼への思いは変わらない。
天候不良だったのにも関わらず駆け付けてくれた彼に感謝をする。
青色の大きな白色な菊の花が咲く振り袖を着た緊張した顔の私の隣には紺色のスーツ姿の彼が微笑む一枚。

私の高校の卒業式の写真立ての隣に置く。
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