心理作戦といこうか。
お宮参り前に産院で一ヶ月健診があり、その時に頂いた誕生日と出生体重、名前、足型が刻印されたガラス製の記念品を手に取る。

逆子が治らず最終的には予定帝王切開でのお産となった。
オペが終わり病室へと運ばれるタイミングで玲君との対面をし、彼は私が寝たきりの様な状態に顔が青くなったのは今でも鮮明に覚えている。
そのせいか彼の過保護さは一向に増していくばかりだ。

「真琴~朔(さく)が泣いてる~!
 おむつは替えたからお腹が空いたのかも知れない!!
 今はミルクは嫌みたいだから頼む」

「はあーい!分かった~」

振り向けばブルーのカバーオールを着た朔を抱っこしている彼があたふたと息子をあやしている。
微笑ましいこの光景を胸にしまい、彼から娘を預かりソファーに座り授乳をする。
あっという間に新生児から乳児になってしまった息子の成長が今の楽しみである。

「この瞬間が人生の幸せを詰めているように気持ちが良いな。」

「ん?」

「ほら、朔がおっぱいをしゃぶると目を瞑るこの瞬間。
 幸せすぎてどうにかなりそうだよ。」

「ふふふ。うん。そうだね。
 でも、玲君も少しは休んでね。
 私が授乳してる時くらいはゴロゴロしたりテレビ観たりして良いよ?」

「そんな勿体ないことはしたくないんだ。
 この瞬間を大事にしたい。
 あっという間に成長しちゃうだろ?」


育休を取得して一日中、息子のお世話手伝ってくれているのは凄く助かっている。
ただ、余りにも協力的過ぎるのも疲れていないか心配になる。
私には「横になってろ」とか「俺が朔を見てるから休んでろ」とか言ってくれてそれに甘えさせてもらっている。


だけど、うん。確かにその通りだね。
毎日一枚写真を撮る事を日課にしている彼を過保護になっちゃう、いや、もう既に過保護になっているのを心配するが一日一日を大事にしてもう会えない今日にもう一度会えるように写真に収めるのは良い事なのかも知れない。



ちらっと振り返り先ほどまで自分が居たところに目を向ける。
出産の記念品を思い出の写真と共に飾りたいと思い、並んだ写真立ての後ろに置きメモリアルコーナーのレイアウトは締めくくった。





いつか、朔にも素敵な恋愛をして欲しいなと願う。




朔が玲君に似ていたら彼の相手の女の子はきっと大変だろうなあと考えると自然と笑みがこぼれた。




end
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