ステレオタイプの恋じゃないけれど
己の面が良いのだと気付いたのは、中学生の頃だった。元々、女子にはよく話しかけられていたし、俺自身、人見知りもないから誰とでも話せる性格だったのもあって、まぁ、モテた。
月に二、三回は告白されてたし、バレンタインには友チョコだなんだと、義理なんてないとかなんとか、世論に感化された女子達が言っていたにも関わらず、貰ったチョコはダンボール二箱分。
そうなると彼女なんてものは早々にできるわけで、「彼女がいてもいい」だとか「二番目でもいい」だとか言ってくる子もちらほら出てくるわけで、「なら別にいいけど」と上から目線でそんなあり得ない提案に頷くこともしばしば。
となると当然、同性からは嫌われる。
そりゃあもう、完膚なきまでに嫌われた。だけど、そんな状態になっても周りには女子達がいたから、己のそれを異常なのだと気付くことができず、そのまま中学、高校、大学を卒業。
就職した大手企業でも似たような状態に陥ったけれど、学生のときと違うのは、己の行動には金銭が絡んでいる、ということ。端的に言えば、仕事にならなかったからクビになった。それほど優秀ではない俺が女達に囲まれ、ヘラヘラしてばっかりなら、そりゃ仕事になんてならない。クビになるのは当然の帰結で、たった半年で俺は無職になった。
「ゆ~ぅ~し~ん」
「へぇへぇ、また置いてくれ、って言いたいんだろ」
「ご名答!」
そんな俺を憐れに思ってか、「次が決まるまでウチに来いよ」と声をかけてくれたのが、隣のデスクで一番迷惑を被っていたであろうこの男、悠真だ。このとき初めて、俺は神というものが存在していることを知った。