ステレオタイプの恋じゃないけれど
関わりを断ちたいわけではない。
ただ、少しの間。せめて、ナギサちゃんに買ってもらった登山道具を眺めながら「会いてぇなぁ」って泣きそうになることがなくなるまでは、そっとしておいて欲しかったというか、何というか。
しかしまぁ、そんなことを面と向かって言えるほど本音をさらけ出すタイプの人間ではない。新たに自分名義で契約した携帯を取り出し、連絡先を交換した。
「時差結構あるけど、まぁ、連絡しろよ。俺もするし」
すいっ、すいっ、と携帯を操作しながら、当たり前のように、友人として接してくる悠真はちょっと性格が悪いと思う。
そりゃ普段は、というか、今まではいい奴だなとしか思ってなかったけど、俺、傷心中よ? お宅の恋人に絶賛片想い中よ? 付き合ってたわけでもねぇのに未練タラタラよ? おかしくね? こんなの初めてだからもうわけわかンねぇよ。
「あー……うん、何かあったられん」
「何もなくてもしろよ」
「……」
「ダチだろ、俺ら」
「……うん」
なんて、そんな感情を間違っても吐き出してしまわないように、へらりと笑う。
「てか、」
「うん?」
「凪沙のとこ辞めたの、俺に遠慮したからか?」
「え、」
まぁ多分、連絡がくれば返事はするけど、俺からすることはないんだろうな。
「俺が、凪沙に、」
なんて思ってれば、悠真の声が、僅かに沈んだ。