ステレオタイプの恋じゃないけれど

 やはり、持つべきものは悠真さまだな。

「仕方ねぇなぁ、と、言いたいところだが、無理だ」
「っへ!? 何で!?」
「俺、先週彼女できたから」
「はぁ!? 聞いてねぇ!」
「いや、わざわざ報告するようなことじゃねぇし」
「っくそ! リア充爆発しろ!」

 と、思った矢先、秒で手のひらを返され、撃沈。
 俺はフラれて、お前には彼女ができてて、何だそりゃ。みじん切りにすンぞ、くそが。

「お前ねぇ、んなこと言うなら家のアテ、紹介してやんねぇぞ」
「おめでとう! いやぁめでてぇな! 彼女、今度紹介してくれよな!」

 なんて、思いはしたが、言いはしなかった俺は偉い!
 めでたい、めでたい、と繰り返しながら、ぐびぐびとアルミ缶の中身を飲み干した。
 寝泊まりできるところのアテがあるだけなのにこの安心感。さすが、悠真さまだ。
 とはいえ、今日は時間も時間だ。終電までにはまだまだ時間はあるが、そもそも俺には電車に乗って帰るような家がない。今宵は泊めてくださるだろう。

「まぁ、機会があればな」
「おう!」
「てことで、行くか」
「へ?」
「あ?」
「ど、どこに?」
「家に」
「だ、れの?」
「お前の雇い主になるかもしれねぇ人の、家」
「……」
「住み込みの家政婦探してるやつがいんだよ」
「……は」
「お前、家事得意だろ?」
「はぁ!?」

 なんて、思い通りに事が運ぶほど、人生というものは甘くはないらしい。
< 3 / 36 >

この作品をシェア

pagetop