ステレオタイプの恋じゃないけれど
過去形。
言われて見れば確かにそうだ。いやでも、そんなの、言葉のあやだろ。
「一応言っとくけど、言葉のあやとかじゃねぇからな」
「へ」
「いやお前、そんなの言葉のあやだろ、とか思ってそうだし」
図星としか言い様のない悠真の指摘に、ぐ、と言葉が詰まる。
何だよ。ナギサちゃん、文法とかに拘る人なンか。いや詳しいな悠真。何。俺のが知ってンだぞアピールかこの野郎。
「てかお前、告んなくていいのかよ?」
「へ」
「最初に言ったろ。あいつの男関係もあんま褒められたもんじゃねぇんだよ、って」
「いっ、てた、けど」
「いやお前がもう凪沙のことどうも思ってねぇならそれでいいけど、その様子だとまだ好きなんだろ? ならさっさと告らねぇとまた男遊び始めんじゃねぇの、あいつ」
なんて思って、少しだけ拗ねていれば、「いやもうしてるかもな」と続ける悠真。
男遊び。そのパワーワードに思わず悠真を見れば、にたりと悪そうな笑みをヤツは浮かべた。
「お前雇ってる間は、一切してないっぽかったから聞いたんだよ、俺。最近遊び行ってねぇんだな、って。そしたらあいつ何て言ったと思う?」
「……何」
「ゲンくんと遊ぶ方が楽しいから、だとよ」
「っ」
「あいつはさ、誘われたら、まぁついてく方なんだけど、他人を自分から誘うのは一切ねぇんだよ」
「……え」
「あいつが何かに誘うのは、普通に、」
「まっ! てっ!」
「あ?」
「やめろ。ンなこと言われたら」
「言われたら?」
「き、期待、しちまう、」
「しろよ」
「え」
「んで、万が一、違ってフラれてどん底に落ちたら、指差して笑ってやっから」
前言撤回。
悪そう、じゃなくて、悪そのものだった。