苺タルト、ポテトキッシュ、みかんジャム、バニラシェイク
みかんジャム
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みかんジャム
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「ねー、ねーってばー」

後ろからハグされて、左肩に顎が乗っかった。

息遣いが耳たぶに触れてぞわぞわする。

「はいはい、なあに」

皿を洗いながら、気忙しなく応えると、

「呼んだだけー」

甘えた声が返ってくる。

ぺたぺたくっつく甘い声は、何となく、朝食べたみかんジャムを思い出す。

単品じゃ食べれたものじゃない甘さは、
淡白な食パンと合わせるくらいがちょうどいいい。

「呼んでる暇があったら、お風呂にお湯入れといて」

「はーい」


パタパタとスリッパを鳴らしながら、温もりが遠ざかる。

浴室の扉を開ける派手な音と、浴槽に水が落ちる音がした。

その間、皿洗いがはかどるはかどる。


うん、でもなんだろう、物足りない。


「お湯入れたよー」

「うん、えらいえらい」


機嫌良さそうな声がリビングに戻ってきて、少し、安心する。


しつこくて、気が利かなくて、苦々しく思うこともあるけれど、癖になる甘さのせいで、いつも許してしまうのだ。

それに。


「すごーい、お皿、ピカピカだね!」


私の顔をのぞき込んでくる、

太陽をめいっぱい浴びたみかんのような、無邪気に笑う透き通った笑顔が、私は大好きなのだ。


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