苺タルト、ポテトキッシュ、みかんジャム、バニラシェイク
バニラシェイク
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バニラシェイク
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バニラって、存在感がよく分からない。

バニラアイスは牛乳味……つまりプレーンなアイスの味で、

何も味がしないのがバニラ、みたいな認識が私にはある。

だから、「シェイクは何味にする?」って聞いた時に、
「バニラ」って答えが返ってきた時には、
思わず「なんで?」と聞き返してしまった。


「なんでって、バニラ好きだから」

困ったようにそう言われて、私は目を丸くした。
バニラが好きな人なんていたんだ。

「イチゴとかチョコじゃなくて?」

「うん」

心底不思議だったから、念を押すように尋ねてみたけれど、迷いなく頷かれた。

本当にバニラが好きなんだ。


「私、イチゴとチョコしか食べたことないよ」

お会計しながらカウンターの向こうをのぞくと、店員さんがシェイクの機械にカップをセットして、どんどん白いシェイクを注いでいく。

ううむ、あれ、飲む意味あるのか?


「バニラが一番シンプルでおいしいんだよ」

「ふーん……そう?」

「日常に一番馴染む味だから」


ふむ。

ということは、バニラ好きは、何てことない日常を、自然体で楽しめる感受性の持ち主なんだろう。

なんだかうらやましい気がするぞ。


「お待たせいたしました」


カウンターに置かれた、白シェイク。

バニラ好きが手早くストローを差し、私の方に差し出してくる。

「どうぞ」


一口すすると、冷たくて、甘くて、まろやかで……素朴な味に、華やかな香りがふわっと舞った。


「どう?初バニラは」

うん。

バニラって、おいしかったんだね。


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