推しを愛でるモブに徹しようと思ったのに、M属性の推し課長が私に迫ってくるんです!
午後三時五分 西浦さん視点
**** 午後三時五分 西浦さん視点 **** 

 
 何か浮田課長の様子がおかしい。私と田中君を何度も交互に見たり、何かをスマホで検索したりしている。これは業務に影響が出るのではないか。確か今日は急ぎの案件があった。取引先のM社の担当は表面上は笑顔でも、ネチっこく嫌みを言う奴。そこ宛てに見積書を送ることになっているのだけれど。
 
 
「浮田課長、M社の見積書なのですが。私が作成しました物で大丈夫なのかご確認頂けますか? 浮田課長に指摘された場所は変更していますが……」
 
「え? M社……? あ、ごめん! 今からやります……」
 
 
 珍しい、珍しいではないか! 浮田課長が大事な仕事を忘れていた。一体何があったと言うのだろう? もしや、私がトイレに行っている間か、コピーを取りに行っている間に何かあったのか?
 

 ま、正か! 浮田課長は私と田中君の仲を疑って……。そうか、そうなのか! 浮田課長の狙いは田中君?
 
 
 私は席を立って田中君の側に行く。田中君は「何か用?」と私を見ないまま、必死にパソコンに何かを打ち込んでいる。ああ、あの出来が悪かった見積書の書き直しか。
 
 
「ねえ、田中君。私が居ない間に、浮田課長が声を掛けてた?」
 
「浮田課長? 別に……。あ、そう言えば最寄り駅は何処だとか聞いてきたような?」
 
「最寄り駅の確認? そうか、偶然を装うのね……。ドラマでもその手を使っていたわ」
 
「はあ? 何言ってんだ? 意味がわからねえ」
 
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