推しを愛でるモブに徹しようと思ったのに、M属性の推し課長が私に迫ってくるんです!
就業後の二人① 西浦さん視点
**** 就業後の二人① 西浦さん視点 ****
「大丈夫だから……。俺がちゃんと家まで付いていく」
浮田課長が私に声をかけている。だけれども私は声を上げられない。だってこんなに近くに浮田課長が座っているなんて。タクシーの中は狭いのだ。浮田課長の脚が私の脚に触れている……。
「課長、近いです……」
「え? ごめん。でも辛いだろうから俺にもたれて良いんだよ、ほら……」
浮田課長は私の身体をグッと引き寄せて自分の胸元へと押しつける。私の心臓の鼓動はMAXになった。モブはこんなご褒美頂いたら駄目よ……。
「浮田課長には田中君が――」
「え? 田中? どうして今、田中の名前が――」
浮田課長はハッとしたように口を噤む。そして何故か不機嫌に車の窓の外を見たのだ。
結局浮田課長は、車内ではその後一言も話さなかった。私はただ黙って浮田課長の肩に自分の頭を乗せて目線を下にする。するとタクシーは静かに私のマンションの前に停車した。
「お釣りはいいです。ありがとうございます」
スマートに料金を払った浮田課長は、私をグッと支えるようにしてタクシーから降りる。腰に回された手は暖かい。私の脳内の処理能力は既に限界を超えていた。
「大丈夫だから……。俺がちゃんと家まで付いていく」
浮田課長が私に声をかけている。だけれども私は声を上げられない。だってこんなに近くに浮田課長が座っているなんて。タクシーの中は狭いのだ。浮田課長の脚が私の脚に触れている……。
「課長、近いです……」
「え? ごめん。でも辛いだろうから俺にもたれて良いんだよ、ほら……」
浮田課長は私の身体をグッと引き寄せて自分の胸元へと押しつける。私の心臓の鼓動はMAXになった。モブはこんなご褒美頂いたら駄目よ……。
「浮田課長には田中君が――」
「え? 田中? どうして今、田中の名前が――」
浮田課長はハッとしたように口を噤む。そして何故か不機嫌に車の窓の外を見たのだ。
結局浮田課長は、車内ではその後一言も話さなかった。私はただ黙って浮田課長の肩に自分の頭を乗せて目線を下にする。するとタクシーは静かに私のマンションの前に停車した。
「お釣りはいいです。ありがとうございます」
スマートに料金を払った浮田課長は、私をグッと支えるようにしてタクシーから降りる。腰に回された手は暖かい。私の脳内の処理能力は既に限界を超えていた。