推しを愛でるモブに徹しようと思ったのに、M属性の推し課長が私に迫ってくるんです!

「……部屋は何階?」

「さ、三階です」

「分かった」


 二人でエレベーターに乗り三階へと行く。二人の足音が夜の薄暗い廊下に響いていた。そして部屋の前に来たときに、「鍵を」と浮田課長が言うので思わずすんなりと渡してしまう。あれ? 何かあったような……。


「あ、駄目です! 開けないで――」


 私の声は既に遅かったようで、浮田課長はドアの鍵を開けて既に中に一歩脚を踏み入れていたのだ。


「こ、これは……。まあ、あれだよ。仕事が忙しいって事だろう?」


 そう、私の部屋は汚部屋なのだ。それを浮田課長に見られてしまった。玄関の靴は所狭しと散らばり、脱ぎ捨てた上着が床に散らばる有様を、私は慌てて片付け出すが、浮田課長が「いいから、君は横になりなさい」と私の手をそっと握る。


 推しに手を握られてエスコートされるなんてと、私は更に顔を赤くさせていただろう。足の踏み場もない室内でも丁寧にベッドまで案内された私は、優しく上着を脱がされていく。


「皺にならないようにジャケットは掛けておくから……。す、スカートはまあ、後で。僕が部屋を片付けておくから、西浦さんは休んでね」

「浮田課長、本当に私は大丈夫なんです。顔が赤いのは推しが――」

「え? 押し入れ?」


 浮田課長が押し入れへと向かって行く、しかしそこには……。


「だめ~! 開けないで!」


 ドサドサ バサー


 浮田課長が開けた押し入れから、大量のBL本が雪崩のように落ちてきたのだ。最近は汚部屋の状態が進み、大事なBLは押し入れに避難させていたのだが、量が増えすぎてギュウギュウ詰めだった。


「え? これって漫画かな?」

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