推しを愛でるモブに徹しようと思ったのに、M属性の推し課長が私に迫ってくるんです!

「え? これって漫画かな?」


 俺の顔は直ぐに紅潮していき、プルプルと手が震え出す。俺が手に取った本は「M男快楽堕ち。αの執着愛はΩを惑わす」と書いてあり、表紙の男は亀甲縛りで吊されていたのだ。
 

「か、課長~! 本当に、駄目ーーーー!」


 俺の手から奪い取った漫画を西浦さんは後ろ手に隠そうとしたが、俺は思わず彼女を押し入れのドアに押さえつける。
 

「……西浦さんはSMに興味があるのかな?」

「え? まあ、興味というか(BL)界隈ではよくある責めでして。受けを攻めが――」

「うん、やっぱり運命なんだよ。西浦さんは僕の理想だ……!」

「はい?」


 俺はもうこれは告白するしかないと思い、忠誠を誓うポーズをとることにした。いわゆる中世の騎士の片膝を立てたポーズだ。


「西浦さん、お願いだ。僕の女王様になって欲しい。ずっと探していたんだ、理想の女王様を。正しく君はその理想像なんだよ」

「え、えーー! いや、女王様って。私はモブなので……」

「モブ? よく分からないけど、君は常に僕を監視するように見てたよね? あの冷たい目……。たまらないんだ!」


 彼女のいうモブの意味は分からないが、これは絶対に逃してはいけない案件だ。目の前に理想の女王様が居るのだから!

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