婚約破棄されたので、森の奥で占いお宿をはじめます。
愛くるしい顔の男性は、本当にグノーだったようだ。

驚きを隠せずにいたけれど、とにかく今は連れてこられた男性の方だ。近付いてみれば、どうやら水晶が映し出した男性に違いなさそうだ。


「うん、そうよ。この人だわ」


意識はなさそうだ。けれど、時折顔をしかめるように眉間に皺を寄せるから、今すぐ命に関わる状態ではなさそう。


「グノー、部屋までお願いね」






布団に寝かされた男性の様子を、注意深く見守る。


「ドリー、怪我はここだけみたい」

背中と頭部に打撲痕がある。頭から血が出ていたようだけれど、すでに止まっている。それほど大きな怪我ではなさそうだ。

綺麗に消毒した後は、目を覚ますのを待つしかない。

「着替えさせないと……」

タオルで簡単には拭いたけれど、雨でぐっしょりと濡れてしまった服は、さすがに脱がせる必要がある。
でも、私がするわけには……



< 103 / 260 >

この作品をシェア

pagetop